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2011年1月21日 (金)

北斗神拳を継承した話。

新年のムードなんざ、すっかり消え去ってしまったこの頃。

引き続き新年のお話を。

  

予定ではね。

元旦をゴーストタウン、シルバートン(Silverton)で過ごしてね。

翌1月2日にアデレードに帰るということになっていたんですよ。

   

予定通りね。

元旦はシルバートンで過ごしましてね。

  

シルバートンを含むニューサウスウェールズ州北西部ではね。

元旦の夜は ”サンダーストーム” の予報。

    

雷雨ですよ。

   

視界を遮るものがないアウトバックではね。

ビカビカと光る稲光がきれいに見れるんですよ。

  

予報どおり雷雨となった元旦の夜にね。

  

見晴らしのいいところで雷を見よう。

  

ということで、車に乗り込みましてね。

    

お?

  

え?

  

壊れましたね。

  

奥様。

  

車が壊れました。

  

こんなアウトバックの真ん中のゴーストタウンで。

   

日付は変わって1月2日。

アデレードに帰る予定の日ですけどね。

  

帰れませんもの。

   

とりあえず車を直さないと。

    

微弱な携帯電話の電波をなんとか探し出してね。

RAAという、日本でいうところのJAFのような機関に電話しまして。

  

状況を説明しますとね。

  

ブロークンヒル(Broken Hill)からレッカー車向かわせますから、待っていてください。

  

やっぱり工場で修理か。

  

今日は日曜日。

  

明日は祝日。

  

奥様。

  

しばらく家には帰れませんよ。

     

レッカー車の到着まで一時間以上待つ覚悟をしていたんですけどね。

意外とあっさりとやって来た大型トラック。

  

朝から照りつけるような太陽の下、トラックを見たときには車が直ったわけでもないのに安堵感が。

  

トラックを降りてきたのは、絵に描いたようなオーストラリアの田舎町のおやっさん。

とりあえずレッカー車がきて一安心の我々に向かってね。

  

開口一番。

  

ギアが壊れた。

  

ブロークンヒルからシルバートンは約25キロ。

アウトバックを貫く一本道はね。

一応、舗装はされているものの道路状況は決していいとは言えず。

  

そんな悪路をかっ飛んできたんでしょうな。

それは非常にありがたいことですけどね。

  

ちょっと手伝ってくれ。

  

はい?

   

ボンネット開けるから。

  

重いよ。

  

気をつけて。

    

     

02012011_1_2      

   

猛暑の中、トラックの下にもぐりこんでガチャガチャといじくるおやっさん。

  

ありがたや。ありがたや。

   

なんとかトラックを直したおやっさんとね。

パジェロを積んでブロークンヒルに向かったわけですけどね。

  

案の定、修理が始まるのは翌々日からだと。

しかも遠隔地であるが故に、部品がなければ取り寄せに時間がかかるとのこと。

    

というわけでね。

結果としては、このブロークンヒルでさらに五泊六日となったわけですけどね。

  

ここブロークンヒルも見ごたえのある街なんですよ。

鉱業により一時は栄華を極めながらも衰退してしまった街。

ある意味ゴーストタウンですよ。

   

昨年のニューサウスウェールズ州制覇旅行の際にね。

アデレードを発って最初に宿泊した街がここブロークンヒルだったんですよ。

  

そのときにはね。

まったく街を見ることなく先へと進みましてね。

  

おもしろそうな街だということは知っていたんですよ。

  

ブロークンヒルで一泊した翌朝にね。

  

ちょっとした夫婦喧嘩をしましてね。

今となっては、そのケンカのタネすら思い出せないほどのくだらないケンカだったんですけどね。

  

宿をチェックアウトした我々はね。

口をきくこともなく車に乗り込みましてね。

  

若干腹を立てていた私はね。

  

無言のまま車を走り出しましてね。

  

無言のまま街のガススタに寄ってガソリンを入れてね。

  

また無言のまま車を走り出しましてね。

  

気がつくと街のはずれに差し掛かりましてね。

  

アウトバックのオアシスとも称されるブロークンヒル。

街を取り巻くのは広大なアウトバック。

    

いよいよ街を出てアウトバックに突入という境に立つ看板にはね。

次の町というか村の名前と距離が。

  

ウィルケニア(Wilcannia) 202km

   

朝飯食いそびれました。

   

口をきかないままブロークンヒルを飛び出してしまいましてね。

朝飯は200キロ先までおあずけですよ。

   

    

今回はゆっくりと過ごせますよ。

五泊六日ですもの。   

  

見所満載のブロークンヒル。

  

三日もあれば大方見て回れますよ。

  

というわけで、多くの時間を宿泊したキャラバンパークのプールで過ごした我々。

   

シルバートンではスプリンクラーでの水浴びに興じまして。

ブロークンヒルではプールを楽しみまして。

    

奥様。

  

今回の旅行ですけどね。

  

海にすればよかったですね。

   

   

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2011年1月14日 (金)

幻のラオウに捧ぐ。

広大なアウトバックの中の小さなゴーストタウン、シルバートン(Silverton)

ケンシロウの世界に浸るためにね。

アデレードから500キロ運転してきたわけですけどね。

  

果たしてその実態は。

  

小さな町にポツポツと建つ住居や店舗は、いまやカフェやギャラリーに変えられていましてね。

  

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オーストラリアのどんな町にも必ずあるパブが一軒。

   

31122010_14

    

  

それから、いまや資料館として使われている学校や刑務所。

  

などなど。

   

ここはね。

  

しっかりと人々が生活しているんですね。

   

ゴーストタウンぢゃないぢゃないの。

   

しっかりとインフォメーションセンターもありましてね。

そこに置かれた小さなパンフレットを読むとね。

   

シルバートンの人口は60人。

  

もはや ”ゴーストタウン” ではない。

   

ここまで来たのにそれはないでしょう。

   

確かにね。

  

人口60人以下の町。

一軒のパブと一軒のガソリンスタンドしかない町。

建物の半分以上が崩れ落ちている町。

   

そんな町はね。

  

いままで散々通ってきているんですよ。

  

車で旅行すればね。

いくらでもありますよ、そんな町。

  

でもね。

”シルバートン” で検索すれば必ずでてくるのは ”ゴーストタウン”。

  

ニューサウスウェールズ州の公式ウェブサイトですらね。

シルバートンはゴーストタウンということで紹介されていますよ。

   

それがね。

  

よくある田舎町であるうえにね。

  

”もはやゴーストタウン” ではない。

  

なんて。

  

ガス代返せ。

   

廃墟とか産業遺跡はね。

まったく人の手が入っていないか、入っていても必要最低限ぐらいにしてくれないとね。

過去を偲ぶのは難しくなるんですよ。

  

実際に店舗として使われるなんてね。

   

廃墟としては言語道断。

  

店舗として使われている時点で廃墟じゃないし。

  

でもまぁ。

  

おもしろい町ですよ。

   

文字通り廃墟となった建物や店舗として使われている建物は、確かに1800年代後半から建っているものだし。

    

シルバートン周辺は1981年公開の映画、”マッドマックス2”の撮影に使われましてね。

   

パブの横にはメル・ギブソンが乗っていた車が展示放置されていたり。

    

31122010_16

         

   

町にはね。

マッドマックス博物館もありまして。

   

行きましょう行きましょう。

  

掘っ立て小屋のような博物館はね。

  

入場料$9。

   

高くないですか?

   

こんな田舎の掘っ立て小屋で900円は。

  

と思いつつもね。

  

二人分で18ドル。   

  

中に入るとね。

   

6畳ぐらいの小屋の内部の大部分はスナップ写真。

  

一部にはね。

マネキンに着せた衣装関係の展示も。

  

そのマネキンの足元になにやら書いてありますよ。

  

”レプリカ”

   

あんたたちが勝手に作ったわけですね。

   

建物の外にも展示スペースがありましてね。

   

小さなガレージに並べられているのは車両関係。

   

その車両のフロントガラスになにやら書いてありますよ。

  

”レプリカ”

  

あんたたちが勝手に作ったわけですね。

  

前述のパブの横に放置されたマックスの車。

シルバートンの写真には頻繁に登場する有名な車ですけどね。

   

博物館の兄ちゃんいわく。

  

あれはレプリカだ。

   

博物館にはね。

もちろんレプリカじゃない本物も展示してありますよ。

  

ガラスケースの中に展示されているのは何ですか?

    

数々の錆びに錆びた物体。

   

何ですか? これは。

 

撮影に使われた品々だそうですよ。

   

アウトバックで発見。

   

あんたたちが勝手に拾ってきたんですね。

     

奥様は ”マッドマックス2” を観たことがないということなのでね。

  

DVDを買おうと話していたんですよ。

  

もちろん売っているでしょう。

  

博物館だもの。

   

ガラスケースに並べられた立派な展示品を眺めながら思うのはね。

   

売ってるわけないぢゃないの。

  

この人たちが勝手に作った博物館でさぁ。

   

高校の文化祭レベルの展示室でさぁ。

   

$18返せ。 

   

正直言うとね。

  

けっこう好きなんですよ。

  

この手のくだらない所が。

  

マッドマックス2。

まさしく実写版 ”北斗の拳” といった感じの映画ですけどね。

  

オーストラリアのアウトバックは核戦争で滅びた地球のイメージそのもの。

  

ところが。

  

昨年から続く異常な雨は、赤土広がるアウトバックでさえも一面の緑に変えましてね。

   

今夏のクランクインが予定されていた ”マッドマックス4” の撮影も一年先に延期されたとか。

  

ところで ”マッドマックス3” って記憶にないんですけど。

   

アウトバックが緑に変わったとはいえね。

真夏の今は、あいもかわらず地獄ですよ。

  

灼熱地獄。

  

シルバートン滞在中、ほとんどを過ごしたのはね。

キャンプ場に張ったテントの近くにあったスプリンクラー。

水を浴びながら、ぼけぇっと一日中座っていたんですよ。

  

セレブな一日。

     

やっと暑さも和らぐのが午後7時をまわるころ。

夏時間の今は日の入りが午後9時近くとなるんでね。

  

夕日でも見に行くか。

  

となるわけですよ。

  

大晦日もね。

  

大地に沈む真っ赤な夕日を見てね。

  

町の小さなパブで年越しをしてね。

  

翌朝は大地から昇る真っ赤な初日の出を見てね。

  

目的達成。

  

明日はアデレードに帰りますよ。  

    

    

少し長くなってしまうんですけどね。

”アデレード 洪水” なんていう検索が増えてきているので。

   

昨年から各地で洪水の被害が続いていたわけですけどね。

被害は人々の想像を超えるものとなりつつありまして。

ニュースで報じられているとおり、クイーンズランド州の州都ブリスベンが浸水被害を受けましてね。

  

被害を受けたのが小さな町だから小さな災害、大都市だったら大災害というわけではないですよ。

どうしてもインフラ整備がせい弱な地方の小さな町は、自然災害の被害を受けやすいわけでね。

    

旅行で小さな町を目にするたびにね。

こんなところでのんびり暮らすのもいいなぁ。

と思いつつも、山火事や洪水のリスクを考えてしまうんですよ。

  

各地から報じられる洪水被害を不憫に思いつつも、どこか他人事のように考えていた人々。

特に都市部に住む人々にとっては”対岸の火事”。

  

それがね。

オーストラリア第三の都市、アデレードなんかよりもはるかに大きな都市が浸水被害にあって都市機能がマヒしたわけですよ。

  

もはや”対岸の火事”ではないですよ。

  

また、高低差が少ないオーストラリア大陸ではね。

河川の水位は上流から下流に向かって徐々に上がっていくんですよ。

   

どこどこにおける水位のピークは何mで何時間後(若しくは何日後)のもよう。

  

人々は実際の被害がどこまで及ぶのかわからないまま対策に追われるんですよ。

こんな真綿で首を絞めるような災害は精神的にもキツイですよ。

   

そんな中、ブリスベンから西へ130キロの内陸の町、トゥウンバ(Toowoomba)を襲ったのは、内陸部の津波(Inland Tsunami)と報じられた鉄砲水。

死者10名以上、行方不明者50名以上を出す大災害となり、死者数はこれからさらに増えると思われます。

  

現在、洪水の被害を受けているのは、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州に南オーストラリア州。

今後も被害が拡大する地域があると思われます。

  

今のところ、アデレードには洪水の被害が及ぶということはなさそうですけどね。

各地を襲った洪水による経済的な影響を受けることは考えられます。

   

日本を襲った昨夏の猛暑。

ヨーロッパと北米を襲う寒波。

オーストラリア大陸を襲う水害。

  

地球のリズムが狂っていますよ。 

  

  

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2011年1月 9日 (日)

ひでぶであべしな正月の話。

えー。

  

新年の挨拶を。

  

年が明けて十日も過ぎた今となってはね。

正月気分なんて抜けに抜けまくっている頃でしょうか。

  

新年の挨拶がここまで遅れましたのですね。

  

事情があるんですよ。

    

  

年末年始と、少しまとまった休みとなったんでね。

  

年越しはキャンプをしよう。

  

ということになったんですよ。

  

アデレードから500キロほど離れたニューサウスウェールズ州北西部のアウトバックに忽然と現れる街、ブロークンヒル (Broken Hill)

銀、亜鉛、鉛などの採掘により、1800年代後半から1900年代中盤にかけて栄えに栄えた街でして。

オーストラリアを代表する大企業であり、世界最大の鉱業会社、BHPビリトンを生んだ街でもあるんですわ。

今日でも採掘は続いているものの、主要な鉱脈を掘り尽くした1950年代頃から街は次第に衰退してきていていまして。

ブロークンヒルの街自体は、アウトバックの真ん中に存する街とは思えないほどの大きさながら、過去の街となった今は枯れた雰囲気が漂っていましてね。

  

そのブロークンヒルから北西に25キロ。

周囲360度すべてアウトバックという中を貫く一本道を走るとね。

シルバートン (Silverton) という町に至るんですわ。

   

この小さな町はね。

ゴーストタウンとして有名な町でしてね。

  

ブロークンヒルよりも早くに町が生まれ、鉱業によって栄えたんですけどね。

やがて、ブロークンヒルに都市機能が移っていくにつれて、シルバートンの町も衰退してね。

     

今や、その町はゴーストタウンとなっているそうで。

   

大陸のいたるところで様々な鉱物を採掘してきた歴史をもつオーストラリアにはね。

それこそ、いたるところに ”ruin” と称される廃墟が残っているんですよ。

   

そして我々夫婦はね。

  

そんな廃墟が大好き。 

   

建物やら採掘に使用した重機類なんかをね。

放っておいたら廃墟となりました。

一応100年ほどの歴史があるので ”ruin” として小さな看板でも立てておきますよ。

  

31122010_34

   

「もしかしたら危ないかもしれないですよ。」 いう旨の看板が立っていることもあるんですけどね。

基本的には柵もなく、自由に入ったり触れたりできることも多いんですよ。

保存しようという努力も、特に事故防止のための対策なども施されていない廃墟はね。

素直に過去を偲ぶことができるんですわ。

  

これがね。

保存のための補強やら、安全対策のための柵なんてものがあるとね。

興醒めしてしまいますよ。

     

国立公園の山の中に木々に埋もれるようにして建つ大きな壁。

   

山の斜面に横たわるのは、錆びに錆びたレールの残骸。

   

なにやら車の残骸などもありますよ。

      

”ruin” を楽しむにあたってはね。

過去を偲ぶ気持ちを忘れてはだめですよ。

     

少しでもその気持ちが揺らぐとね。

    

目に映るものはね

  

不法投棄。

   

それでも、そんな廃墟が好きでね。

出先で ”ruin” を見つけると必ず訪れる我々。

  

ゴーストタウンと称されるシルバートンを見逃すわけにはいきませんよ。

  

年末から年始にかけて、アデレードは気温40度超の予報。

アウトバックは文字通り灼熱となる予報ですよ。

  

友人を誘うとね。

  

絶対に行かない。

  

暑いもの。

  

海に行く。

  

正当な意見ですよ。

  

暑いというか、熱い中にね。

  

なぜ故にアウトバック?

  

マゾですか?

  

友人がね。

  

奥様に聞きましたよ。

    

奥様はどうなの?

  

アウトバックに行きたいの?

  

海に行きたいの?

   

  

私はね。

  

もう洗脳されているから。

  

  

数日前からね。

  

ことあるごとにね。

  

  

ブロークンヒルの近くにね、奥様。

  

ゴーストタウンがありましてね、奥様。

  

メル・ギブソン主演の映画 ”MAD MAX2” の撮影も行われたというシルバートン周辺は、さながら ”北斗の拳” の世界が広がっているそうですよ、奥様。

  

アウトバックに昇る初日の出も見れますよ、奥様。

  

どうします? 奥様。

   

    

行く。  

  

     

そうですか。

  

奥様も行きたいんですね。

  

洗脳成功。

  

行きましょう、行きましょう。   

  

シルバートンで三泊ほどキャンプしてね。

新年を迎えて1月2日に帰ってこようということでね。

昨年12月30日にアデレードを発ったわけですけどね。

      

この続きはまたということで。

  

それでは、アウトバックに昇る初日の出とともにね。

  

明けましておめでとうございます。   

  

     

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2010年11月 7日 (日)

太陽を求めて放浪した話。後編。

そのキャンベラを発った日はとんでもない大雨の日でしてね。

次の目的地はビクトリア州のスワンヒル(Swan Hill)

キャンベラからは多少距離があるので、今日は中間地点のヘイ(Hay)という町まで行きましょう。

    

スタートハイウェイ(Sturt HWY)はシドニーとアデレードを結ぶ幹線道路ですけどね。

マレー川(Murray River)の支流であるマランビジー川(Murrumbidgee River )に沿って走っているんですよ。

ヘイに向かって走れば走るほど雨脚は強くなりましてね。

途中徐行を余儀なくされるほど。

  

なんとか昼過ぎにはワガワガ(Wagga Wagga)という町に到着しましてね。

昼食をとっていざ出発。

  

ところがね。

町から先のハイウェイはすべて封鎖。

  

冠水したみたいですよ。

  

戻ろうにもね。

ここまで通ってきた道も封鎖。

  

まさしく八方塞がりですよ。

 

ここに泊まればいいじゃない。

  

水が引くのを待ちましょうよ。

   

ツーリストインフォメーションで教えてもらったキャラバンパークの名前はね。

   

Wagga Wagga Beach Caravan Park

   

ワガワガはニューサウスウェールズ州の内陸の町ですよ。

  

なぜ故にBeach

   

レセプションで聞いてみるとね。

キャラバンパークのすぐ横にはマランビジー川。

その川原がビーチのようになっていて子供たちには人気があるとのこと。

   

なるほど。

   

大雨ですけど大丈夫ですか?

  

チェックインの手続きも終わってね。

  

パーク内の地図で我々が滞在するキャビンの位置と、レセプションからのアクセスを説明してくれる女性。

  

あなたたちのキャビンはここ。

   

川のすぐ横だけどね。

  

水位はまだ低いから大丈夫。

   

本当ですか?

   

結構降りましたよ。

多少弱まったとはいえね。

まだ降ってるし。

  

ここまでの道中でね。

いろいろ見てきましたよ。

   

道路の横を滝のように流れる水とか。

   

溢れそうな川とか。

  

もう溢れちゃった川とか。

  

現にね。

   

道路は封鎖される事態ですよ。   

   

それでも今はね。

この女性を信じるしかないんですよ。

このキャビンだってね。

キャンセルによって一つだけ空いていたわけだし。

他の宿泊施設だってね。

動けなくなった旅行者でいっぱいになることは容易に想像できますよ。

   

もう車中泊なんてイヤ。

   

キャビンに行ってみるとね。

  

なるほど。

   

川のすぐ横ですな。

   

15102010_wagga_wagga_6    

    

あきらかに普段は川じゃないところが川になっていますよ。

   

大丈夫ですか?

  

水位はまだ低いとおっしゃっていましたよ。

  

大丈夫でしょう。

   

それよりもね。

雨も弱まってきているし。

外は十分明るいし。

  

何か見所はありませんか?

  

この町には。

  

とはいえ時間は夕方と呼ばれる頃合となっていましてね。

こんな田舎町の見所はすでに閉館となっている時間。

  

奥様がツーリストインフォメーションからもらってきたパンフレットの中にね。

鉄道博物館(Rail Heritage Museum)というものがありましてね。

   

魅力的じゃないの。

  

でもどうせ4時か5時で閉館だろ。

  

パンフレットには開館時間載っていますか?

  

開館時間。

  

Mondays 10am to 2pm

   

はい?

   

私の稚拙な英語力で理解したところですね。

  

開館時間はね。

  

月曜日の午前10時から午後2時まで。

   

のみ。

     

なんですか?

  

これは。

  

超ピンポイント営業。

  

暗くなるころには再び雨脚も強まりましてね。

   

奥様。

  

これは明日も道路は封鎖されたままじゃないですかね。

   

もう一泊しましょうか?

   

道路の状況は携帯から常時チェックすることができるんですけどね。

  

夜半を超えるころになっても封鎖されたまま。

   

朝一で道路状況を確認した上でね。

この町を離れるか、もう一泊するか決断するということになったんだけどね。

   

気持ちの上では98%もう一泊。

  

   

翌朝。

  

ほぼ延泊するつもりで眠りこけていたんですけどね。

繰り返されるノックの音で目が覚めまして。

時計を見ると7時をまわったところ。

  

我々にとっては思いっきり早朝ですよ。

  

なんですか?

  

こんな時間に。

  

玄関先にはトランシーバーを手にしたおっさんが一人。

  

いますぐ逃げろ。

  

寝起きの頭でもね。

その言葉だけですべてを理解しましたよ。

  

川が溢れるんだな。

  

16102010_wagga_wagga

        

昨日見えていた看板が完全に水没しましたね。

一晩で水位が2m近く上がりましたよ。

   

奥様。

  

逃げろ!

    

朝が弱い奥様も一発で状況を理解しましてね。

外に出てみるとブルドーザーは走り回ってるわ、消防団の人たちは大勢いるわで。

     

キャラバンパークのキャビンにはね。

キッチンと調理器具、食器等が備え付けてありましてね。

チェックアウト時にはすべて洗ってきれいにするのがルールなんですよ。

   

昨夜の夕食後には9割がた延泊するつもりだった我々。

明日洗えばいいやと汚れた食器はシンクに放置されたまま。

  

逃げますよ。奥様。

  

待って。

  

まだ食器が。。。

  

って奥様。

   

避難ですよ。

  

文字どおり車に荷物を放り投げてね。

寝巻きのまま飛び乗ってね。

     

夜逃げ状態。  

  

ところどころ冠水していたものの、道路は開通しておりまして。

ビクトリア州はスワンヒル(Swan Hill)を目指すわけですけどね。

  

一泊したもののキャラバンパークに缶詰状態となっていたワガワガという町についてはね。

  

いまだに謎のまま。

   

その日の夕刻。

スワンヒルで観たニュースが報じていたのはね。

  

ワガワガで洪水。

  

大洪水となったみたいですよ。

我々が町を離れたあと。

   

  

昨日ワガワガのツーリストインフォメーションで聞いたのはね。

  

過去15年間ひどい干ばつに苦しんできたと。

それが、今年の頭から雨が降り続いてこの有様なんだと。

   

まったく降らないか、降れば大洪水。

     

地球のリズムが狂っていますよ。

  

この旅行でね。

7000キロ運転しましたけどね。

どこもかしこも工事だらけ。

都市部はもとより。

都市と都市を結ぶハイウェイの人里離れたところでもね。

  

工事工事工事。

  

景気がいいからなのか。

はたまたリーマンショック後の景気対策の名残なのか。  

  

オーストラリア大陸を一周するハイウェイが国道1号線。

中でもシドニーとブリスベンを結ぶ区間は国内でも有数の主要幹線道なんですけどね。

都市部以外は片側一車線の相互通行なんですよ。

一定区間ごとに追い越し車線が現れるんですけどね。

    

10年振りにこの区間を運転してみるとね。

片側二車線の区間がずいぶんと増えていましてね。

さらに、現在片側一車線の区間でも二車線化の工事が進められているんですよ。

    

悲惨な光景ですよ。

山間部に道路を作るわけですからね。

工事に伴うのは大規模な森林伐採。

     

何十年も何百年もそこにあった木々を切り倒されて、丸坊主にされた山や森林にはね。

もはや雨を蓄える力は残っておらず。

土砂を削り取った茶色い水が一気に大量に河川に流れ込む事態となるわけですよ。

   

オーストラリアは自然を大切にする国。

  

そう思っていたんですけどね。

   

だからこそ、日本の捕鯨廃止を求めて国際司法裁判所に提訴したことも正論だと思っていたんですよ。

捕鯨の是非じゃなくてね。

自然を大切にする国と国民が抱く当然の感情なのだと納得していたんですよ。

    

人の国のインフラ整備に口を挟むつもりはありませんけどね。

いたるところで目にする工事は、まるで新興国や発展途上国の勢いに任せた開発工事。

その下品な工事が度重なる災害の片棒を担いでいることは明白なわけですよ。

   

大変だったとはいえ、我々は一介の旅行者として洪水に遭遇しただけであってね。

そこは自分の生活圏内から1000キロ以上離れた地なわけで。

  

あくまでも対岸の火事。

    

不謹慎ですけどね。

    

災難は実際に自分の身に降りかかってくるまでは対岸の火事。

    

このままでいいんですかね?

   

対岸の火事が国中に延焼するのもね。

そんなに遠い未来の話ではないなと思いましたよ。

  

度重なる雨にやられた旅でしたけどね。

  

いろいろと考えさせてくれる雨でもありましたな。 

  

  

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2010年11月 4日 (木)

太陽を求めて放浪した話。 前編。

今年はオーストラリア全土で雨が多い年でね。

Driest Stateである南オーストラリア州でも雨の多い冬となりまして。

冬の終わりから春先にかけては、各地から洪水のニュースも。

  

普段から何かと雨にやられる我々夫婦。

   

もちろん今回もやられましたよ。

  

アデレード出発は小雨の中。

   

こんなもんでしょう。

  

それでも、ゴールドコーストに到着するまでの四日間。

時折雨は降ったものの、車での移動中や夜寝ている間に限られましてね。

   

雨夫婦である我々にしては上出来じゃないすか?

  

なんて話をしていたんですよ。

  

さて、ゴールドコースト。

   

多くの人がね。

   

”オーストラリア”と聞いて思い浮かべるもの。

   

ハーバーブリッジとオペラハウス。

  

カンガルーとコアラ。

  

それにね。

  

ゴールドコーストの雲ひとつない青空と、どこまでも続くビーチ。

     

晴天の日は年間300日以上と言われていましてね。

一年のうち八割は晴れですよ。

     

奥様にとってゴールドコーストとはどんなところですか?

   

どんよりしたところ。

   

ゴールドコーストに滞在した三日間のうち、二日間は低い雲に覆われた曇天。

時折小雨もパラパラと。

   

しかもね。

今年の5月に日本に帰国した際にね。

乗り継ぎ地であるゴールドコーストに三日ほど滞在したんですよ。

そのときはね。

三日間を通して曇天もしくは雨。

  

天気が悪くて肌寒い海辺の街。

   

それがゴールドコーストと聞いて奥様が思い浮かべるものですよ。

  

テーマカラーは間違いなくグレーですな。

     

   

バイロンベイ(Byron Bay)はゴールドコーストから車で一時間ほどのニューサウスウェールズ州北部の町。

オーストラリアの東端でもあるこの町。

ヒッピーの町と称されることも多いんですけどね。

近頃はすっかりツーリストの町、リゾートの町となったものの、町を流れるのは昔のままのゆるい時間。

  

ここは私がオーストラリアで最も好きな場所。

  

日頃からね。

  

奥様にね。

  

東海岸にはバイロンベイという町がありましてね。

  

それはそれは素晴らしいところですよ。

   

何がそんなに素晴らしいの?

  

言葉では表すことのできない素晴らしさですよ。

  

ぜひ体感していただきましょう。

  

バイロンベイ滞在は三日間。

   

奥様にとってバイロンベイとはどんなところですか?

   

どんよりして人がいっぱいいるところ。

   

天候が芳しくなかったばかりか、スクールホリデーと重なったおかげで、町のはるか外から渋滞が起こるありさま。

  

天気が悪くて肌寒くて人がいっぱいいる海辺の町。

  

それがバイロンベイと聞いて奥様が思い浮かべるものですよ。

  

バイロンのテーマカラーも間違いなくグレーですな。

       

  

バイロンを発って、クレセントヘッド(Cresent Head)に到着する頃には雨も本格的になってきましてね。

クレセントヘッドは私のわがままで決まった滞在先ですよ。

  

波乗りしたい。

  

海辺でキャンプでもしてさ。

のんびりと釣りでもしましょうよ。

  

と言って奥様を連れてきた場所ですよ。

  

ホリデーコーストと呼ばれるようにね。

シドニーあたりに住む人々が夏の太陽を楽しむ海辺の町。

とはいえ、クレセントヘッドには小さな村があるだけですけどね。

  

それはそれはきれいなビーチがありますよ。奥様。

  

クレセントヘッド滞在は三日間。

   

奥様にとってホリデーコーストとはどんなところですか?

  

どんよりして大雨が降る場所。

   

激しい風雨が滞在中続いてね。

  

もはやストームですよ。

  

海は洗濯機状態でクローズアウト。

  

海以外には何もない、というか海を含めたアウトドア以外には何もないホリデーコースト。

  

雨なんか降ったらね。

  

やることありませんよ。

  

何か遊ぶものは持ってきてないんですか?

  

こういうときに備えて。

  

トランプとか。

  

バックギャモンとか。

  

旅行といえば、いつもいつも雨にやられるんだから。

そろそろ学習してもいいころ。

  

何か遊ぶものはありますか?

  

はい。

  

フリスビー。

   

それは屋外で遊ぶものですから。

  

それだけですか?

    

遊び道具は。  

   

クレセントヘッドを発つという日。

キャンプ生活なのでね。

テントや椅子、テーブルなどを畳んで車に積み込むというめんどくさい作業があるんですけどね。

  

朝から大雨ですよ。

  

もう一泊しますか?

  

ずぶ濡れになりますよ。

  

こんな中でパッキングしたら。

  

結局ね。

もう一泊したところで、翌日も大雨っぽいこと。

もう一泊したところで、このストームの中では暇を持て余すこと。

   

というわけでね。

多少は雨脚が弱まったとはいえ、降り続ける雨の中でパッキング。

  

結果はね。

  

ずぶ濡れとなったテントその他のキャンプ用品を積んだおかげで車内もずぶ濡れに。

  

濡れて湿った車内はね。

かぐわしい香りを発しましてね。

その後の行程で、しばらくの間我々を苦しめたわけですよ。

  

しかもね。

パッキング作業中にポケットに入れていた携帯電話がね。

  

ずぶ濡れとなった挙句。

そっと息をひきとりまして。

  

降り続く大雨と吹き続ける強風に、いまにも溢れそうな河川。

  

それがホリデーコーストと聞いて奥様が思い浮かべるものですよ。

  

テーマカラーは限りなく黒に近いグレーですな。

       

     

雨から逃げるようにして向かったニューキャッスル(Newcastle)では珍しく晴天続き。

続くシドニーでも曇りと晴れを繰り返し、天気はまあまあ。

  

ブルーマウンテン(Blue Mountain)と首都キャンベラ(Canberra)では雨にやられたものの許容範囲内。

どちらもテーマーカラーはグレーとなりましたが。

  

クレセントヘッドではコテンパンにやられましたからね。

もうないんじゃないんですか。

  

雨は。

  

ところがね。

   

キャンベラを発つころから新しい話は始まりまして。。。

  

後編へ続きますよ。

  

  

  

   

   

昨日ニュースで報じられたアンディ・アイアンズの訃報。

サーフィン大国オーストラリアでは、各局のニュースで流れまして。

彼の死因については、早くもいろいろな憶測が流れていますけどね。

   

サーフィン界は一人の偉大なサーファーを失った。

  

事実はそれだけですよ。

  

故人のご冥福をお祈り申し上げます。

  

  

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2010年11月 1日 (月)

アドベンチャーを求めて放浪した話。

ニューサウスウェールズ州の北部に広がるTweed Valley

  

オーストラリアの中で、最も好きな場所でしてね。

NightcapBorder RangesMebbinMt.Warningなど、点在する国立公園はいずれも世界遺産に登録された温帯雨林の深い森に囲まれておりまして。

  

かのニンビン(Nimbin)Tweed Valleyに存する村の一つ。

  

1970年代にAquarius Festivalが開かれてニンビンの歴史がスタートしたのも。

ここがヒッピーの聖地となったのも。

多くのアーティストがここに移り住んできたことも。

  

すべてはTweed Valleyの自然に魅せられてのことであってね。

  

とかく、路上でものを売る人々ばかりが話題になりがちなニンビン。

  

それだけではないんですよ。

  

この息を呑むような大自然をね。

ぜひ奥様にも体感していただこうと。

2000キロ離れたアデレードからやってきたわけですよ。

         

Tweed Valleyの中でも、ひときわ高くそびえる休火山、マウント・ウォーニング(Mt.Warning)

楯状火山の山頂からはバイロンベイ(Byron bay)や遠くゴールドコーストまで望むことができましてね。

  

ぜひ奥様にも登っていただきましょう。

  

目の覚めるような景色を奥様にも見ていただきましょう。

    

頂上までどれくらいかかるの?

  

私は過去に登ったことがありましてね。

   

きつかったのは最後の山頂アタックのみ。

  

だったような記憶が。

    

楯状火山の山頂部はね。

がけ状の岩場に鎖が打ってあってね。

その鎖につかまりながら、岩場をへばりつくように登って山頂へといたるんですよ。

最後の鎖セクション以外はそんなにキツイもんでもないですよ。

  

だったような記憶が。

    

何しろワーホリメーカーとしてゴールドコーストに滞在していたのは、もう10年以上も前の話。

観光で来てマウント・ウォーニングアタックしたのですら、2003年頃の話なので7年も前の話。

  

正直覚えていませんよ。

   

二時間あれば頂上まで行って帰ってこれるんじゃないすか?

   

たぶん。。。

  

奥様。

  

このウォーニング山アタックを試みるパーティーのリーダーは、経験者の私ということでよろしいですね。

   

よろしいですね。

   

ウォーニング山の登頂口からは、さほど遠くない山の中でベースキャンプを張っていた我々。

山頂アタックを試みる日は珍しく二人とも早く起きましてね。

  

入念な準備に時間をかけましょう。

   

ゴールドコーストで手に入れた日本語新聞にはまること二時間弱。

   

いかんいかん。

  

山頂アタックの入念な準備を。

    

朝ごはん。

    

山頂アタックの入念な準備を。

    

うんこしてきます。

   

大事ですよ。

  

それは。

  

そんなこんなで入念な準備に時間を取られましてね。

意気揚々とベースキャンプを発ったのは午後になってから。

     

山道を屈強な四輪駆動車でウォーニング山に向かいますよ。

山々が連なるこのあたりでも、ウォーニング山は頭一つ飛び出していましてね。

  

奥様。あれが本日アタックを試みるウォーニング山ですよ。

  

到着した登山口には看板がありますよ。

    

登山路 往復8.8キロ 4~5時間

  

なんですか?

   

トレッキングコースの入り口には、たいてい所要時間が書いてあるんですけどね。

好奇心が小学生並みの我々には、その二倍程度の時間が必要なんですよ。

  

そもそも8.8キロなんて。

  

死んじゃうべな。

   

もう一つ看板がありますよ。

   

冬季は午後12時以降の登山禁止

  

ですと。

  

オーストラリアの東端であるバイロンベイは目と鼻の先。

標高1000mを超えるウォーニング山はオーストラリアで最初に日が昇る場所ともいわれていましてね。

裏返せば日が暮れるのもオーストラリアで最初ということですよ。

春先の今頃でも午後5時を過ぎるとかなり暗くなるんですよ。

   

今の時間は?

  

午後二時をまわったところですね。

    

登ったことあるんじゃないの?

    

なにがですか?

   

ありますよ。登ったこと。

  

何でも聞いてくださいよ。

    

8.8キロもあったら二時間で帰ってこれるわけないじゃないの。

  

なにがですか?

  

今から登ったら暗くなっちゃうじゃないの。

  

死んじゃうべな。

  

パーティーのリーダーである私は決断をしなければならないですよ。

ここで強いリーダーシップを発揮しないとね。

パーティーは全滅してしまいますよ。

  

断腸の思いで。

   

明日にしましょう。

  

明日出直しましょうよ。

早起きしてさ。

午前中に登山を開始しましょうよ。

今日のところはベースキャンプに戻ってさ。

明日のために入念な計画を練りましょうよ。

   

入念な計画。

  

明日の朝は日本語新聞禁止。

  

翌日。

  

昨日のミーティングで決めたように、日本語新聞は手にすることなく登山の準備をベースキャンプでたんたんと進める我々。

  

奥様。

  

準備はよろしいですか?

  

では出発しましょう。

   

登山口に到着したのはね。

  

午後1時をまわったところ。

   

昨日と一時間しか変わらないじゃないの。

   

おまけに晴天だった昨日とはうって変わって曇天。

いまにも降り出しそうな空にね。

  

どうする?

   

とりあえず登りましょう。

  

やばくなったら引き返せばいいんじゃないですか?

  

心配しなくても引き返すタイミングはリーダーが決めますから。

   

登りだして30分もするとね。

けっこう勾配はキツイですよ。

     

そんなにキツくないって言ってたよね?

  

なにがですか?

  

さらに登っていくとね。

登山道はかなり急となるうえに足元も岩だらけでかなりキツイ。

   

そんなにキツくないって言ってたよね?

   

なにがですか?

  

前はこんなにキツくなかったですよ。

  

私が登った7年前はね。

  

こんなにキツイ山じゃありませんでしたよ。

  

いつからこの山はこんなにキツくなったんですかね。

  

これも地球温暖化の影響ですかね。

  

私が登った7年前はね。

  

私は20代でした。

   

時計を見ると午後2時半。

時折小雨が降ったり、晴れ間が覗いたり。

   

ここでリーダーは決断を迫られましてね。

   

奥様。

  

午後3時半をもって下山としましょう。

  

いいですね。

  

あと一時間たったら山頂に着いていなくても下山しますよ。

  

一時間半も歩いて、早くもヘロヘロですけどね。

   

私はあと一時間たったら強制的に下山する道を選びますよ。

   

いいですね。

  

わがままは許しませんよ。

  

死んじゃうから。

  

あと一時間歩いても山頂に着かない山なんてね。

   

こっちから願い下げ。

    

どうにかこうにか山頂目前の鎖セクションにたどり着いた我々パーティー。

    

上を見上げるとね。

  

壁。

  

こんなに急だったっけ?

  

しかもね。

  

下から山頂は見えず。

  

鎖でよじ登るのってほんの少しだけって言ってなかった?

  

なにがですか?  

    

さあ、アタックを開始しますよ。

   

これはね。

  

かなりキツイですよ。

  

ゆっくりゆっくりと。

  

鎖をつかみながらよじ登っていく私。

  

先を登る奥様が振り返ってね。

  

私に向かって。

  

パーティーのリーダーである私に向かって。

  

なんで小鹿のようになってるの?

  

鎖を握った腕もね。

  

岩の隙間にかけた足もね。

  

産まれたての小鹿のようにプルプルと。

   

こんなにキツかったっけ?

  

ふと下を見るとね。

足元はすべて雲に覆われていて何も見えず。

我々のところまで霧が広がってきていますよ。

遠くからは雷鳴も。

  

死んじゃうべな。

   

三時間近く頂上を目指して登ってきましてね。

文字通り山頂は目と鼻の先ですよ。

あと一歩で息を呑むような景色が見れますよ。

    

鎖にぶら下がってプルプルしているリーダーはね。

決断を求められまして。

    

勇気ある撤退。

   

二時間近くかけて下山しましてね。

二人ともヘロヘロですよ。

   

ウォーニング山。

  

登頂ならず。

  

奥様。

  

私のオーストラリアで一番好きな場所の一つですよ。

   

ぜひ山頂からの景色は見てもらいたいですな。

  

またチャレンジしましょうよ。

  

でもね。

  

もう当分いいです。

  

どんぐらいキツイか忘れたころに再アタックしましょう。

    

7年後ぐらいに。

  

  

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2010年10月30日 (土)

寝床を求めて放浪した話。

一ヶ月にわたる旅行中の宿はね。

  

基本的にキャンプ。

  

国内に散在する国立公園内にはキャンプグラウンドが整備されていてね。

施設はぼっとん便所のみというところがほとんどなんだけど、人里離れた国立公園内で静かにキャンプができるのでね。

   

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施設使用料と国立公園の入園料を合わせ、一泊につき$5~$15程度徴収されます。

    

場所によっては水道や温水シャワーなどが完備されているところもありますけどね。

そういうところは人も多いのでね。

静かなキャンプグラウンドを求める我々は、必然と施設の少ないところ、アクセスの悪いところへと向かうわけですよ。

   

そうするとね。

キャンプグラウンドでのキャンプ中はシャワーを浴びないわけで。

三日もシャワーを浴びることなくね。

大自然の中を駆けずり回って。

焚き火に燻され続けて。

   

全身がカユイですよ。

                           

このままだと汚れた夫婦になってしまうのでね。

  

キャンプグラウンドでのキャンプと、キャラバンパークのキャビンに滞在するというのを交互に繰り返したわけですよ。

  

キャラバンパークというのはね。

民間経営のキャンプ場でね。

広大なパーク内にはテント用のキャンプサイトとキャンピングカー用のサイト、それに共同のトイレやシャワー、ランドリー施設や共同のキッチンなどを備えていまして。

また、キャラバンパーク内には据え置きのキャビンと呼ばれるプレハブ小屋がありましてね。

一昔前は据え置きのキャラバン(牽引型のキャンピングカー)が主流だったんですけどね。

いまや、キャラバンはほとんど見かけることはなく、バス、トイレ、キッチンなどを完備したプレハブ小屋にとって変わられているんですわ。

   

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今回滞在した中で、最安値は一泊$60で最高値は一泊$160。

  

ちなみに$160はキャビンの値段としては異常ですよ。

これについては、後述しますけどね。

  

このキャラバンパーク。

オーストラリアにはそれこそ全土に星の数ほどありまして。

大都市近郊にもあって便利なんですよ。

   

キャンプの疲れを癒し、シャワーを存分に浴びて、汚れた洗濯物も洗えてね。

まさにオアシスのような空間なのに、ちょっとしたキャンプ気分も味わえて。

   

さて。

そんなこんなで計33泊。

波乱万丈でしたよ。

    

今回の旅行はね。

スクールホリデーとばっちり重なってしまいまして。

この時期のスクールホリデーはどこの州でも二週間なんですけどね。

つまりは重なったといっても二週間だけのはずなんですよ。

  

ところがね。

州によってホリデーの時期が微妙にずれていましてね。

クイーンズランド州はニューサウスウェールズ州よりも一週間早く始まるんですよ。

おかげでね。

合計三週間スクールホリデーに苦しめられまして。

   

ゴールドコーストとシドニーのちょうど中間に位置するクレセントヘッド(Cresent Head)

メローなレギュラーの波が岬に沿って規則正しく割れる、カリフォルニアのマリブのようなサーフポイントで有名なんですけどね。

そこから未舗装道を10キロほど走った国立公園内にキャンプグラウンドが三ヶ所あるんですよ。

   

クレセントヘッドに到着した頃には、日はすっかり暮れていましてね。

 

新しい場所には明るいうちに着いて宿探しを始めることが絶対なんですよ。

特にキャンプでテントを張らなければならないのであればなおさら。

そんなことは百も承知ですけどね。

  

達成困難な目標の一つ。

  

でしたな。   

  

真っ暗な海沿いの林道を進んでいくとね。

  

ありましたよ。

  

キャンプグラウンド。

  

なんですか。

  

この混みようは。

   

ホリデー中といってもね。

施設の少ないキャンプグラウンドは比較的空いていることが多いんですよ。

  

ところがね。

   

奥様に言わせるとね。

  

難民キャンプみたい。

  

真っ暗な中でね。

もう隣同士のテントが重なり合っていてね。

そこらじゅうに焚き火があって。

大勢の人々がひしめきあっていて。

      

思えばね。

クレセントヘッドを含むここらへん一帯はね。

  

通称”ホリデーコースト”。

  

   

大都市シドニーにはね。

比較的早い時間に入ったんですよ。

  

これでゆっくり宿探しができる。

  

シドニー周辺にはキャラバンパークが少なくてね。

苦労しながらも、シドニーのシティから電車で15分ほどという好立地のキャラバンパークを見つけたんですよ。

   

キャビンは空いていませんよ。

   

テントサイトなら空いていますよ。

   

うーん。

  

テントか。

  

どうします?奥様。

   

テントサイトなら空いていますよ。

   

あと一つだけ。

      

決めます。

         

決めちゃってください。  

          

普通ですよ。

35歳の夫婦がですよ。

旅行でシドニーに行ったといえばですよ。

   

ホテルでしょう。

   

別に超高級でなくともね。

  

ホテルでしょう。

   

それから三日間ね。

朝となればテントから這い出てね。

大都会シドニーの街に繰り出したわけですよ。

   

シドニーでは贅沢をしようと決めていたのでね。

食事は制限なしで食べたいものを食べたんですよ。

  

太っ腹にチップも払ってね。

  

またテントへと帰っていくわけですよ。

   

ところがですよ。

こんなのはまだ序の口でしてね。

  

首都キャンベラには夕方5時半に到着しましてね。

サマータイムも始まっていたため、5時半といっても昼間のような明るさ。

その頃にはスクールホリデーも終わっていたんでね。

  

さっさと宿決めてさ。

   

シャワー浴びようよ。

  

ブルーマウンテンでのキャンプ三泊の後だったんでね。

   

全身がカユイですよ。

   

シャワー浴びてさっぱりしたらさ。

  

ご飯でも食べに行こうよ。

   

ライトアップされた国会議事堂でも見に行こうよ。

    

ところがですよ。

  

宿がまったく空いていませんよ。

  

キャラバンパークだけでなく。

モーテル、ホテル、サービスアパートメントなどなどすべて満室。

誰に聞いても理由は分からない。

   

あたりはすっかり暗くなってきてね。

10キロほど離れた隣町まで足を伸ばしてみたんですけどね。

  

すべて満室。

  

パブホテルですら満室。

  

この頃になるとね。

  

ちょっとやばいかも。

  

と思い始めてきまして。

なにしろ、すべて満室の上に時間的にはレセプションが閉まる頃ですよ。

  

車中泊という言葉が頭をよぎる中。

さらに車で右往左往してね。

看板が”VACANCY”となっているキャラバンパークを見つけたんですよ。

  

入っていくとね。

すでに閉まったレセプションの建物の前に備え付けられたインターフォンを押し続ける先客が一人。

  

彼はバイク乗りみたいですよ。

   

我々よりも緊迫した人がいる。

  

ちょっと安心。

  

彼が言うにはね。

  

パウダーフィンガーのライブでどこも満室だ。

  

20年のキャリアを持つオーストラリアのロックバンド、Powderfingerは活動休止を表明していてね。

最後のツアーを観ようと全豪から人が押し寄せているんですわ。

  

なるほど。

  

そりゃ空いてないわな。

  

しかしね。

  

宿探しを始めてからすでに5時間以上。

  

なぜ故に誰もPowderfingerのことを教えてくれなかった?

  

もっと早くその事実を知っていればね。

対処法もあったはず。

  

そろそろ飯食ったほうがいいんじゃないですか?

  

現実逃避。

  

オレも奥様もね。

  

そろそろ分かっているんですよ。

  

今夜は車中泊。

   

でもね。

  

キャンプの後だし。

  

カユイし。

  

臭いし。

  

しかもね。

旅行は後半に差し掛かっていてね。

   

車内は掃き溜めの様相。

   

あんなところで寝れませんって。

   

もはやレストランも閉まる時間となりましてね。

   

世界のマックへ。

  

24時間営業ですよ。

  

もうこのまま朝までここにいるか。

  

ゆっくり食べてみてもですよ。

つぶせる時間なんてせいぜい20分ぐらいのもので。

椅子だって一見ソファ風ですけどね。

30分も座れば痛くなってくるし。

   

行きましょうか。

  

どこに?

  

隣町まで行ってみましょうか?

  

50キロ離れた隣町。

   

時間は深夜12時近くですよ。

  

オレだって分かっているんですよ。

キャンベラなんていうのはね。

首都だけどね。

何もない山の中に首都を作ったのであってね。

5分も走れば何もない山の中に入っていくんですよ。

そんなところを50キロも走ったってね。

   

レセプションが開いている宿なんてあるわけないじゃないの。

  

そもそも隣町の規模すら分かりませんよ。

町というか村っぽいし。

     

車を走らせて5分もすればね。

あっという間に真っ暗な山道ですよ。

   

日付、変わりましたね。

    

たどり着いた隣村。

  

真っ暗ですよ。

   

モーテルは2件ほどありますけどね。

  

真っ暗ですよ。

  

インターホン押してみますけどね。

  

無視されていますよ。

   

奥様。

  

いよいよ腹を決めないと。

  

いいですね。

     

ここで寝ましょう。

    

波乗りに行ってね。

車中泊をするなんてことはよくありますわな。

  

でもね。

  

全然違いますよ。

  

旅行中にね。

真っ暗なハイウェイの脇のね。

休憩スペースに車を停めて夫婦で寝るというのは。

   

いやぁ。

  

寝れねぇって。

   

とはいえ。

  

翌朝目を覚ました頃にはすっかり明るくなっていてね。

横を走るハイウェイにはけっこうな交通量が。

  

こんなところで寝ていたんですか。

   

キャンプに車中泊とね。

すっかり汚れた夫婦はね。

  

朝一番でインフォメーションセンターに行きまして。

  

空いているキャビンはないですか?

  

一番安いので一泊$160。

   

法外ですよ。

キャビンで$160なんて。

   

空いているモーテルで$140。

  

どうしますか?

  

ここで考えていたら昨夜の二の舞ですよ。

普段なら$160のキャビンなんて泊まりませんけどね。

   

ま、いっか。

   

昨夜は宿泊代かかってないし。

  

  

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2010年10月29日 (金)

放浪記。

旅に出ていたんですよ。

  

しばらく音沙汰のない間にね。

   

三週間に渡る旅行の綿密な計画を立ててアデレードを発ったのが先月21日のこと。

アデレードに戻ってきたのは一ヵ月後の10月24日のこと。

   

綿密な計画から一週間以上過ぎていますよ。

   

大陸の南部中央に位置する南オーストラリア州はね。

州の西側を西オーストラリア州と、北側を北部準州と、東側に至ってはクイーンズランド州にニューサウスウェールズ州とヴィクトリア州の三つの州と接していましてね。

つまりは海に浮かぶタスマニア州と、ニューサウスウェールズの中央山間部に囲まれた首都特別地域(ACT)以外のすべての州と接していましてね。

旅に出るには非常に便利な場所なわけですよ。

   

今回の旅はね。

   

ニューサウスウェールズ州完全制覇。

   

なぜ故にニューサウスウェールズ州に光をあてる必要があるのか分かりませんけどね。

   

結果としてね。

   

そういうことになりました。

    

というわけでね。

   

アデレードから北上してニューサウスウェールズ州を目指し。

ニューサウスウェールズ州側の州境の街、ブロークンヒル(Broken Hill)からアウトバックをひた走ってダボー(Dubbo)へ。

タムワース(Tamworth)からはニューイングランド地方と呼ばれる内陸部を北上してクイーンズランド州のゴールドコーストヘ。

   

アデレードからゴールドコーストまでは2000キロ強。

四日間でゴールドコーストにたどり着きましたけどね。

  

オレの綿密な計画上では四日間でニューサウスウェールズ州のほぼ北端の街、バイロンベイ(Byron Bay)に到着する予定であってね。

   

ゴールドコーストなんてね。

  

予定に入っておりませんもの。

  

しかもね。

   

予定が変更になったために計画を見直すなんていう気はね。

  

さらさらありませんもの。

  

奥様。

  

ゴールドコーストに滞在した関係でね。

  

予定が二日ほど延びましたよ。

   

ゴールドコーストからはひたすらニューサウスウェールズ州の海岸線を南下しましてね。

  

ニンビン(Nimbin)周辺の世界遺産の森でキャンプ。

オレの中ではオーストラリアで最も好きな街であるバイロンベイ。

ゴールドコースト~シドニー間(約1000キロ)のちょうど中間地点に位置するクレセントヘッド(Cresent Head)でキャンプ。

   

   

奥様。

  

クレセントヘッドでは三泊しましたけれどね。

   

綿密な計画の上では二泊となっておりますよ。

   

  

クレセントヘッドを発った後はね。

気を取り直してね。

大都市シドニーを目指すわけですけどね。

   

ここで車のクラッチが壊れまして。

   

こりゃシドニーから160キロ離れたニューキャッスル(Newcastle)で修理したほうがいいですな。

   

クラッチの修理で一日。

   

せっかくニューサウスウェールズ州で二番目に大きな街にきたんだからともう一日。

  

   

奥様。

  

ニューキャッスルでの二泊は予定には入っておりませんよ。

   

   

クラッチも直ったというわけで大都市シドニーへ。

綿密な計画の上では二泊ですけどね。

  

大都市であるがためにもう一日追加。

   

  

奥様。

  

綿密な計画のことはもう忘れていいですね。

   

  

シドニーからブルーマウンテンに向かい世界遺産の森でキャンプ。

首都キャンベラに向かう頃には綿密な計画なんて思い出すこともなく。

   

今日は何日だっけ?

  

知らん。

  

今日って何曜日だっけ?

  

知らん。

     

若干壊れてきましたよ。

   

  

ちなみにオレが立てた綿密な計画には重大な欠陥がありましてね。

  

キャンベラから先は白紙。

  

アデレード~キャンベラ間は約1200キロ。

その気になれば二日で帰ってこれるのでね。

ここで調整しようと思っていたんですよ。

  

ところがですよ。

   

調整どころかね。

  

キャンベラを発った時点ですでに予定の日程を超えていまして。

   

思えばね。

   

オレの綿密な計画なんて。

   

最初から白紙。

  

みたいなものだったわけで。

  

ここまでくるとね。

   

できれば帰りたくないですな。

    

現実逃避。

    

車はニューサウスウェールズ州とビクトリア州の州境をマレー川に沿って西に走りましてね。

ニューサウスウェールズ州のワガワガ(Wagga Wagga)という町で強制的に一泊。

それからマレー川のほとりに拓けたビクトリア州のスワンヒル(Swan Hill)にて三泊。

   

スワンヒルはね。

アデレードから東へ500キロほど。

   

  

奥様。

  

西へ向かって走れば一日で帰れますよ。

   

   

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

   

南下しました。。。。。

    

  

これが最後ですから。

   

グランピアンズ(Grampians National Park)でキャンプしたら帰りますから。

    

というわけでね。 

   

最後のキャンプを楽しみまして。

   

五泊ほど。

   

   

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2009年4月21日 (火)

タスマニア物語。”いい旅・夢気分”編。

タスマニア滞在中の中日二日間は州都ホバートに滞在しましてね。

奥様のほうは知らんが、オレは全く期待していなかったのね。

ホバートという街に対しては。

  

現在住んでいる田舎町アデレードの人口が150万人強。

対してホバートは20万人ほど。

しょせんはオーストラリアの極小都市であろうと。

   

島の中央部、クレイドルマウンテンをホバートに向けて発ったのが昼過ぎ。

少し遅めの昼食を取りながらね。

カフェの壁に貼ってある地図を何気なく見た奥様。

  

「 ホバートまで6時間半だって。」

  

マジ?

  

300キロないですよ。

  

ホバートまでは。

  

クレイドルマウンテンからホバートに向かうにはね。

大きな大きな国立公園をぐるっと回っていかなくてはならなくてね。

当然道路はうねうねの細い道。

   

夜になってしまうぢゃないの。

   

ホバートには期待していないものの一応目的があってね。

   

まずはね。

  

寿司。

  

タスマニアはシーフード天国。

オーストラリアのインチキ臭い海苔巻きじゃなくてね。

金に糸目はつけないから思いっきり豪華な海鮮丼を食ってやる。

  

次にね。

  

風呂。

  

というかシャワーですな。

  

フェリーで一泊+キャンプ三泊でね。

シャワーを浴びることなく四日過ぎまして。

おまけに毎晩焚き火に燻されているし。

  

汚れた英雄(二人)。

  

がんばって運転しましてね。

かなりキツイですよ。

うねうねな上にアップダウンが激しくて。

おまけに狭いし。

制限速度は100キロ。

後ろから時折地元の車が恐ろしいスピードで迫ってくるし。

  

地図を見ながらね。

ここまで行けば道はよくなるだろうと予想するんですけどね。

  

どこまで行こうとも山道のまま。

  

そのうちあたりは薄暗くなり始めまして。

  

現時点でね。

  

泊まる宿が決まっていない。

  

過去にメルボルンの4つ星半ホテルで散々な目にあった我々。

そのホテルには全く問題はないんですけどね。

    

泊まる我々が落ち着かない。

  

なので今回はバックパッカーでいいと。

  

バックパッカーやYHA(ユースホステル)となるとね。

急がないとレセプション閉まりますよ。

おまけにね。

  

「 今日は何曜日?」

  

「 土曜日じゃない?」

  

ん?

  

「 寿司屋って日曜日やってるの?」

  

ここは日本じゃないですからね。

日曜日は休業するレストランも多いですよ。

  

「地球の歩き方」を確認する奥様。

  

「 やってないね。」

  

てことはだ。

  

なんとしても今日中に食べる。

   

「 何時まで?」

  

ここは日本じゃないですからね。

営業時間till late(遅くまで)なんて謳いながら8時ごろに閉めるレストランも多いですよ。

  

「 9時までだって。」

  

現時点でのホバートまでの距離を確認してね。

  

いける。

  

8時にチェックインしてそのまま寿司屋に向かえば大丈夫。

  

一応泊まる宿は「ロンリープラネット」で目星をつけていてね。

  

奥様ナビのほう宜しくお願いしますよ。

  

しっかしもうすぐホバートだっちゅうのにね。

あいかわらずの山道。

おまけにホバートに近づくにつれて交通量は増えていくし。

  

突然立派なフリーウェイに合流しましてね。

  

いよいよホバートだ。

  

遠くに見えるのは街の灯り。

  

お。

  

全然デカいんですけど。

  

山々が街の背後まで迫るホバート。

その斜面にそってきれいな灯りが。

    

あの中に入っていくの?

  

誰ですか?

極小都市なんて言っていたのは。

  

ずんずん街に近づいていくとね。

  

アデレードよりでかいんじゃないの?

  

その大きさもさることながらね。

  

おしゃれ度でもアデレード完敗。

  

旅行者だから贔屓目に見ていることもあるんだろうけどね。

でもね。

  

メルボルンですらオーストラリアのイモ臭さ全開でしたよ。

    

泊まろうと思っていたバックパッカーはCBD(セントラル・ビジネス・ディストリクト)から離れていてね。

ならCBDには行かなくていいよね。

初めての街のCBDなんて行ってしまったら迷うことは必至ですからね。

  

奥様ナビ宜しく。  

   

奥様ね。

  

ナビが苦手。

  

オレもね。

毎回怒るまい、怒るまいとは思うんだけどね。

ついついハンドルを握りながらカチンとくることも数知れず。

  

でも今日はね。

お互い初めての街だし。

疲れているし。

  

怒りませんよ。

  

何が起ころうとも。

  

「 あ。シティまで来ちゃった。」

  

「 いいよ、いいよ。今ドコか分かってる?」

  

そのままCBDに入りましてね。

ぐるぐると。

  

「 行き過ぎちゃったかな?」

  

「 もういい。地図貸せ。」

  

あれほど誓ったのに。

  

今日は怒らないって。

   

なんとかたどりついた目星をつけたバックパッカー(の周辺)

  

車に奥様を残して探しましてね。

それらしい建物はあるんですけどね。

  

真っ暗。

  

しかも看板は不動産屋ですよ。

  

車に戻りましてね。

  

「 おかしいな。住所はあっているんだけどな。」

  

「 中に入ってみれば。」

  

バカ言うなって。

  

こんな時間にあんな真っ暗なところに入っていったらね。

  

撃たれますよ。

  

電話してみよう。

  

っていうかさ。

  

最初から電話しろ。

  

案の定ね。

  

「 おかけになった番号は現在使われておりません~」

  

だって。

  

つぶれてやんの。

  

バックパッカーなんてつぶれるの?

英語のガイドブック「ロンリープラネット」は全世界のバックパッカーのバイブルですよ。

  

オレが持っているのは3年前のだけど。

  

そこで危機を察した奥様。

  

「 先にゴハン食べよう。」

  

って。

  

機転がききますな。

  

このまま寿司も食えなかった日にはね。

  

オレはキレますよ。

  

というかね。

  

死ぬまで愚痴り続けますよ。

   

結局ありついた海鮮丼は期待を大きく裏切るものでね。

  

「 これならアデレードでも食えるよね?」

  

そこは大衆的なジャパレスにしか過ぎなくてね。

思い描いていた高級海鮮丼にはありつけず。

  

とはいえね。

   

腹も落ち着けば一安心。

  

ホテルを探しましてね。

今度は一軒一軒電話して。

  

10分以内にくるんならいいわよ。

  

というホテルに向かってね。

地図を見ながらシティ内をぐるぐると。

おまけにホバートのシティは一方通行だらけ。

   

腹も落ち着けば一安心。

  

最後は奥様が若干険悪ムード漂う車から飛び出して徒歩で探しあてまして。

  

翌日ね。

明るいなかでホバートの街を改めて目にしましてね。

  

アデレード完敗。

  

おしゃれですよ。

  

この街は。

  

雪の予報が出るぐらい寒い日でね。

ロングコートにブーツを履いた細身の女の子が街を闊歩。

  

これがアデレードだとね。

     

冬でもキャミソールを肌にぐいぐい食い込ませた女の子が街を闊歩。

  

シドニーに次いで二番目の歴史を持つホバートは街並みもきれい。

シティの後ろを見ると大きな山が迫り、目の前には美しい港が広がっていまして。  

  

レストランも多くてね。

その日の夜は港にあるシーフードレストランに出かけまして。

  

ちょっぴり高級なレストラン。

  

大丈夫。

  

シャワー浴びたから。

  

その日は日曜日。

レストランはほぼ満席でね。

街にも活気があるし。

  

日曜の夜はどこのレストランも閑古鳥が鳴いていてゴーストタウンと化するアデレードとは大違いですよ。

  

しかもね。

このレストランで食したタスマニア産の生牡蠣。

クリーミーでとろけるようなうまさ。

  

さらにね。

タスマニア産サーモンの石焼。

再びとろけるようなうまさ。

   

気に入りました。

  

この街。

  

引っ越しましょう。

  

永住権が取れたあとにね。

どこかに引っ越そうと話をしていましてね。

本当は半年から一年ぐらいかけてオーストラリア一周旅行をしようと思っていたんだけどね。

今の時点で仕事から離れるのは大きなマイナスになると思いましてね。

それなら他のところでしばらく暮らすかと。

  

タスマニアも候補だったんですけどね。

現実的にはむずかしいと思っていたんですわ。

何しろ僻地中の僻地だと思っていたもんでね。

  

実際に目で見てみないと分からないもんですな。

  

ところで。

3月に永住権を申し込んだんですけどね。

通常でも審査に半年以上かかるんですわ。

  

それがね。

  

全ての審査を7月まで凍結する。

  

ですって。

  

理由はこの不景気。

オーストラリアも失業率が上がっているんでね。

移民どころではないそうですよ。

  

というわけでね。

どうやら今年中には取れそうにないですな。

  

今のままでも特に問題はないんですけどね。

自由に働けるし。

ただね。

永住権を取得するまでは自由に国外に出れないんですわ。

11月に一時帰国しようと思っているんですけどね。

  

早くも暗雲が。

  

ホバートに引っ越すのもね。

  

いつになることやら。

  

  

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2009年4月16日 (木)

タスマニア物語。”野生の王国”編。

特異な生態系を持つオーストラリア。

その中でもタスマニアは大陸から隔絶された独特の生態系を持つことで知られていてね。

  

タスマニアと聞いて真っ先に思いつくのが”タスマニアン・デビル”。

牙をむき出しにして威嚇する恐ろしい顔写真は有名ですな。

体長50~60センチほどの大きさの有袋類はデビルの称号にふさわしい牙を持ち、食欲は旺盛でポッサムやウォンバットなどは骨ごとバリバリと食ってしまうんだと。

  

反して性格はおとなしくて臆病であると。

  

よくワカラン動物ですな。

  

手付かずの自然に覆われた島内には野生動物も多く、「地球の歩き方」によると”ウォーキングトラック上はもちろん、日中でも車道に頻繁に飛び出してくる”そうで。

滞在したホテルの庭でタスマニアン・デビルやハリモグラ、カモノハシなどの珍しい生物を目撃したなんて話もよく聞きますな。

  

見よう見よう。

  

珍しい野生動物どもを。

  

フェリーの到着地デボンポートからクレイドルマウンテンまでは1時間半から2時間のドライブ。

曲がりくねった細い山道の制限速度は100キロ。

一応飛び出しを警戒して80キロほどでドライブ。

  

2時間ほど運転してもね。

  

何もいないね。

  

旅は始まったばかりですから。

  

そのうち出てくるでしょ。

  

最初のキャンプ地は前述のように湖のほとり。

キャンプグラウンドも背の高い木々に囲まれていてね。

  

日も暮れてあたりが闇に包まれた頃。

時間が経つにつれてね。

  

ギャー。

  

ムキー。

  

ブフー。

  

そこら中から奇声の類は聞こえてくるんだけどね。

姿は全く見えず。

  

テントに入った後にはね。

  

ドスッ ドスッ ドスッ

   

何かが走っていますよ。

  

ドタッ ドタッ ペタン。 ドタッ ドタッ ペタン。 ドタッ ドタッ ペタン。

  

何者?

  

姿は全く見えず。

  

メジャーなキャンプグラウンドは国立公園の中。

焚き火は禁止。

  

そりゃね。

世界自然遺産の中で焚き火はダメでしょう。

  

焚き火は外せない我々は国立公園外のマイナーなキャンプグラウンドに滞在したのね。

メジャーなキャンプグラウンドやホテルなんかは当然人も多いんでね。

野生動物にエサを与える不届き者もいるわけでね。

野生動物も多少は人に馴れているんだけどね。

こんな人もいないキャンプグラウンドの野生動物は警戒心が強くて姿は見せないんだわ。

  

翌日はちょっと遠出をしてね。

日が暮れた後にキャンプグラウンドまで100キロ近いドライブを余儀なくされまして。

  

制限速度100キロの山道は60キロでドライブ。

  

ちんたらちんたらと。

   

・・・・・・・・・・・・・・・・・

  

何もいないね。

  

キャンプグラウンドの手前3キロからは森の中の未舗装道。

  

さすがにここは出るだろう。

  

時速30キロ。

  

もはや飛び出しが恐いなんてことよりもね。

意地でも見つけてやるっていう執念ですよ。

  

お!

  

何かが走っていますよ!

  

ポッサムぢゃん。。。

  

ポッサムなんて可愛らしい名前がついていますけどね。

  

なんてことはない。

  

猫ぐらいの大きさのネズミ。

  

あんなものはアデレードの街中にだっていますよ。

  

あ!

  

何かが飛び跳ねていますよ。

  

ワラビーぢゃん。。。

  

犬ぐらいの大きさの小型カンガルー。

  

サウス・オーストラリアのキャンプグラウンドには大きなグレイカンガルーが大挙して押し寄せますよ。

  

まぁね。

  

旅は始まったばかりですから。

  

翌日はクレイドルマウンテンを望む湖を一周する国立公園内のウォーキングトラックへ。

湖を周回する6キロのコースは冷温帯雨林に覆われた美しいトラック。

  

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こんなトラックを3時間ほどかけて歩きましてね。

  

何もいないね。

   

この頃になるとね。

  

この島には動物なんていないんじゃないか?

  

なんていう考えが浮かぶ始末で。

  

「地球の歩き方」によると”ウォーキングトラック上はもちろん、日中でも車道に頻繁に飛び出してくる”と。

  

ウォーキングトラック上でも見れないのに車道に出てくるわけないぢゃん。

  

最初のキャンプ地に三泊したあとは州都ホバートまで300キロのドライブ。

オーストラリア本土ならね。

300キロは休憩しながらでも3時間でいけるんだけど。

何しろこっちは100キロ走るのに2時間以上かかるような山道。

ホバートまでは6時間以上のドライブとなりまして。

当然日暮れ後もドライブですわ。

  

何もいないね。

  

旅も中盤に向かおうとしていますよ。

  

州都ホバートから100キロに位置するのが1800年代の入植当時の監獄遺跡、ポートアーサー。

ホバートから向かうとすぐに山道となってね。

  

オーストラリアでよく目にする動物注意の看板。

黄色いひし形の中にカンガルー、コアラを始めウォンバットやカモノハシなども登場するんだけどね。

  

ポートアーサーに向かう道中には見慣れない看板が。

  

タスマニアン・デビルの看板だ。

   

これは期待できますな。

   

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  

何もいないね。

  

出てくるのは看板ばかり。

  

ポートアーサーまで目と鼻の先というところでね。

  

お。

  

タスマニアンデビルパーク。

  

そこらじゅうにいるんなら動物園なんて必要ないじゃんね。

  

この島には動物なんていないんじゃないか?

   

ホバートで二泊した後は東海岸まで300キロのドライブ。

  

・・・・・・・・・・・・・・・・

        

何もいないね。

  

もういいですよ。

  

旅も終盤ですからね。

  

若干のあきらめ感。

   

キャンプ地は大きなラグーンのほとり。

背の高い木々に囲まれた静かなキャンプグラウンドですわ。

毎晩焚き火をしながら夜更かししているんですけどね。

  

ポッサム以外出てこない。

  

もっと驚かせてくれよ。タスマニア。

魑魅魍魎の巣かと思っていましたよ。

これじゃサウス・オーストラリアのほうが野生の王国ですよ。

  

結局ポッサムとワラビー以外目撃することなく島を後にした我々。

  

メルボルンーアデレード間で一泊したんですけどね。

  

中途半端に小さな町に滞在してもおもしろくないんでね。

いっそのこと何もないところに泊まろうと。

  

行きの道中に目をつけていたモーテルがあってね。

森に囲まれたハイウェイの傍らに突然ソイツは現れるんですけどね。

   

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大仏?

  

この伊豆にでも建っていそうな大きなコアラ。

その名も”ジャイアント・コアラ”。

横にはモーテルとカフェがあってね。

  

辺りは背の高いユーカリの木。

  

こりゃコアラがいるんじゃないのか?

   

チェック・インの後、日没せまる林の中にコアラを探しに出かけたんですけどね。

  

何もいないね。

  

翌日。

宿のオヤジに聞いたのね。

  

「ここら辺にコアラはいるの?」

  

「ここに7年いるけど2匹見た。」

  

ジャイアント・コアラなんて建てるなって。

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