無料ブログはココログ

2011年1月21日 (金)

北斗神拳を継承した話。

新年のムードなんざ、すっかり消え去ってしまったこの頃。

引き続き新年のお話を。

  

予定ではね。

元旦をゴーストタウン、シルバートン(Silverton)で過ごしてね。

翌1月2日にアデレードに帰るということになっていたんですよ。

   

予定通りね。

元旦はシルバートンで過ごしましてね。

  

シルバートンを含むニューサウスウェールズ州北西部ではね。

元旦の夜は ”サンダーストーム” の予報。

    

雷雨ですよ。

   

視界を遮るものがないアウトバックではね。

ビカビカと光る稲光がきれいに見れるんですよ。

  

予報どおり雷雨となった元旦の夜にね。

  

見晴らしのいいところで雷を見よう。

  

ということで、車に乗り込みましてね。

    

お?

  

え?

  

壊れましたね。

  

奥様。

  

車が壊れました。

  

こんなアウトバックの真ん中のゴーストタウンで。

   

日付は変わって1月2日。

アデレードに帰る予定の日ですけどね。

  

帰れませんもの。

   

とりあえず車を直さないと。

    

微弱な携帯電話の電波をなんとか探し出してね。

RAAという、日本でいうところのJAFのような機関に電話しまして。

  

状況を説明しますとね。

  

ブロークンヒル(Broken Hill)からレッカー車向かわせますから、待っていてください。

  

やっぱり工場で修理か。

  

今日は日曜日。

  

明日は祝日。

  

奥様。

  

しばらく家には帰れませんよ。

     

レッカー車の到着まで一時間以上待つ覚悟をしていたんですけどね。

意外とあっさりとやって来た大型トラック。

  

朝から照りつけるような太陽の下、トラックを見たときには車が直ったわけでもないのに安堵感が。

  

トラックを降りてきたのは、絵に描いたようなオーストラリアの田舎町のおやっさん。

とりあえずレッカー車がきて一安心の我々に向かってね。

  

開口一番。

  

ギアが壊れた。

  

ブロークンヒルからシルバートンは約25キロ。

アウトバックを貫く一本道はね。

一応、舗装はされているものの道路状況は決していいとは言えず。

  

そんな悪路をかっ飛んできたんでしょうな。

それは非常にありがたいことですけどね。

  

ちょっと手伝ってくれ。

  

はい?

   

ボンネット開けるから。

  

重いよ。

  

気をつけて。

    

     

02012011_1_2      

   

猛暑の中、トラックの下にもぐりこんでガチャガチャといじくるおやっさん。

  

ありがたや。ありがたや。

   

なんとかトラックを直したおやっさんとね。

パジェロを積んでブロークンヒルに向かったわけですけどね。

  

案の定、修理が始まるのは翌々日からだと。

しかも遠隔地であるが故に、部品がなければ取り寄せに時間がかかるとのこと。

    

というわけでね。

結果としては、このブロークンヒルでさらに五泊六日となったわけですけどね。

  

ここブロークンヒルも見ごたえのある街なんですよ。

鉱業により一時は栄華を極めながらも衰退してしまった街。

ある意味ゴーストタウンですよ。

   

昨年のニューサウスウェールズ州制覇旅行の際にね。

アデレードを発って最初に宿泊した街がここブロークンヒルだったんですよ。

  

そのときにはね。

まったく街を見ることなく先へと進みましてね。

  

おもしろそうな街だということは知っていたんですよ。

  

ブロークンヒルで一泊した翌朝にね。

  

ちょっとした夫婦喧嘩をしましてね。

今となっては、そのケンカのタネすら思い出せないほどのくだらないケンカだったんですけどね。

  

宿をチェックアウトした我々はね。

口をきくこともなく車に乗り込みましてね。

  

若干腹を立てていた私はね。

  

無言のまま車を走り出しましてね。

  

無言のまま街のガススタに寄ってガソリンを入れてね。

  

また無言のまま車を走り出しましてね。

  

気がつくと街のはずれに差し掛かりましてね。

  

アウトバックのオアシスとも称されるブロークンヒル。

街を取り巻くのは広大なアウトバック。

    

いよいよ街を出てアウトバックに突入という境に立つ看板にはね。

次の町というか村の名前と距離が。

  

ウィルケニア(Wilcannia) 202km

   

朝飯食いそびれました。

   

口をきかないままブロークンヒルを飛び出してしまいましてね。

朝飯は200キロ先までおあずけですよ。

   

    

今回はゆっくりと過ごせますよ。

五泊六日ですもの。   

  

見所満載のブロークンヒル。

  

三日もあれば大方見て回れますよ。

  

というわけで、多くの時間を宿泊したキャラバンパークのプールで過ごした我々。

   

シルバートンではスプリンクラーでの水浴びに興じまして。

ブロークンヒルではプールを楽しみまして。

    

奥様。

  

今回の旅行ですけどね。

  

海にすればよかったですね。

   

   

05012011_38

2011年1月14日 (金)

幻のラオウに捧ぐ。

広大なアウトバックの中の小さなゴーストタウン、シルバートン(Silverton)

ケンシロウの世界に浸るためにね。

アデレードから500キロ運転してきたわけですけどね。

  

果たしてその実態は。

  

小さな町にポツポツと建つ住居や店舗は、いまやカフェやギャラリーに変えられていましてね。

  

31122010_27_2

         

オーストラリアのどんな町にも必ずあるパブが一軒。

   

31122010_14

    

  

それから、いまや資料館として使われている学校や刑務所。

  

などなど。

   

ここはね。

  

しっかりと人々が生活しているんですね。

   

ゴーストタウンぢゃないぢゃないの。

   

しっかりとインフォメーションセンターもありましてね。

そこに置かれた小さなパンフレットを読むとね。

   

シルバートンの人口は60人。

  

もはや ”ゴーストタウン” ではない。

   

ここまで来たのにそれはないでしょう。

   

確かにね。

  

人口60人以下の町。

一軒のパブと一軒のガソリンスタンドしかない町。

建物の半分以上が崩れ落ちている町。

   

そんな町はね。

  

いままで散々通ってきているんですよ。

  

車で旅行すればね。

いくらでもありますよ、そんな町。

  

でもね。

”シルバートン” で検索すれば必ずでてくるのは ”ゴーストタウン”。

  

ニューサウスウェールズ州の公式ウェブサイトですらね。

シルバートンはゴーストタウンということで紹介されていますよ。

   

それがね。

  

よくある田舎町であるうえにね。

  

”もはやゴーストタウン” ではない。

  

なんて。

  

ガス代返せ。

   

廃墟とか産業遺跡はね。

まったく人の手が入っていないか、入っていても必要最低限ぐらいにしてくれないとね。

過去を偲ぶのは難しくなるんですよ。

  

実際に店舗として使われるなんてね。

   

廃墟としては言語道断。

  

店舗として使われている時点で廃墟じゃないし。

  

でもまぁ。

  

おもしろい町ですよ。

   

文字通り廃墟となった建物や店舗として使われている建物は、確かに1800年代後半から建っているものだし。

    

シルバートン周辺は1981年公開の映画、”マッドマックス2”の撮影に使われましてね。

   

パブの横にはメル・ギブソンが乗っていた車が展示放置されていたり。

    

31122010_16

         

   

町にはね。

マッドマックス博物館もありまして。

   

行きましょう行きましょう。

  

掘っ立て小屋のような博物館はね。

  

入場料$9。

   

高くないですか?

   

こんな田舎の掘っ立て小屋で900円は。

  

と思いつつもね。

  

二人分で18ドル。   

  

中に入るとね。

   

6畳ぐらいの小屋の内部の大部分はスナップ写真。

  

一部にはね。

マネキンに着せた衣装関係の展示も。

  

そのマネキンの足元になにやら書いてありますよ。

  

”レプリカ”

   

あんたたちが勝手に作ったわけですね。

   

建物の外にも展示スペースがありましてね。

   

小さなガレージに並べられているのは車両関係。

   

その車両のフロントガラスになにやら書いてありますよ。

  

”レプリカ”

  

あんたたちが勝手に作ったわけですね。

  

前述のパブの横に放置されたマックスの車。

シルバートンの写真には頻繁に登場する有名な車ですけどね。

   

博物館の兄ちゃんいわく。

  

あれはレプリカだ。

   

博物館にはね。

もちろんレプリカじゃない本物も展示してありますよ。

  

ガラスケースの中に展示されているのは何ですか?

    

数々の錆びに錆びた物体。

   

何ですか? これは。

 

撮影に使われた品々だそうですよ。

   

アウトバックで発見。

   

あんたたちが勝手に拾ってきたんですね。

     

奥様は ”マッドマックス2” を観たことがないということなのでね。

  

DVDを買おうと話していたんですよ。

  

もちろん売っているでしょう。

  

博物館だもの。

   

ガラスケースに並べられた立派な展示品を眺めながら思うのはね。

   

売ってるわけないぢゃないの。

  

この人たちが勝手に作った博物館でさぁ。

   

高校の文化祭レベルの展示室でさぁ。

   

$18返せ。 

   

正直言うとね。

  

けっこう好きなんですよ。

  

この手のくだらない所が。

  

マッドマックス2。

まさしく実写版 ”北斗の拳” といった感じの映画ですけどね。

  

オーストラリアのアウトバックは核戦争で滅びた地球のイメージそのもの。

  

ところが。

  

昨年から続く異常な雨は、赤土広がるアウトバックでさえも一面の緑に変えましてね。

   

今夏のクランクインが予定されていた ”マッドマックス4” の撮影も一年先に延期されたとか。

  

ところで ”マッドマックス3” って記憶にないんですけど。

   

アウトバックが緑に変わったとはいえね。

真夏の今は、あいもかわらず地獄ですよ。

  

灼熱地獄。

  

シルバートン滞在中、ほとんどを過ごしたのはね。

キャンプ場に張ったテントの近くにあったスプリンクラー。

水を浴びながら、ぼけぇっと一日中座っていたんですよ。

  

セレブな一日。

     

やっと暑さも和らぐのが午後7時をまわるころ。

夏時間の今は日の入りが午後9時近くとなるんでね。

  

夕日でも見に行くか。

  

となるわけですよ。

  

大晦日もね。

  

大地に沈む真っ赤な夕日を見てね。

  

町の小さなパブで年越しをしてね。

  

翌朝は大地から昇る真っ赤な初日の出を見てね。

  

目的達成。

  

明日はアデレードに帰りますよ。  

    

    

少し長くなってしまうんですけどね。

”アデレード 洪水” なんていう検索が増えてきているので。

   

昨年から各地で洪水の被害が続いていたわけですけどね。

被害は人々の想像を超えるものとなりつつありまして。

ニュースで報じられているとおり、クイーンズランド州の州都ブリスベンが浸水被害を受けましてね。

  

被害を受けたのが小さな町だから小さな災害、大都市だったら大災害というわけではないですよ。

どうしてもインフラ整備がせい弱な地方の小さな町は、自然災害の被害を受けやすいわけでね。

    

旅行で小さな町を目にするたびにね。

こんなところでのんびり暮らすのもいいなぁ。

と思いつつも、山火事や洪水のリスクを考えてしまうんですよ。

  

各地から報じられる洪水被害を不憫に思いつつも、どこか他人事のように考えていた人々。

特に都市部に住む人々にとっては”対岸の火事”。

  

それがね。

オーストラリア第三の都市、アデレードなんかよりもはるかに大きな都市が浸水被害にあって都市機能がマヒしたわけですよ。

  

もはや”対岸の火事”ではないですよ。

  

また、高低差が少ないオーストラリア大陸ではね。

河川の水位は上流から下流に向かって徐々に上がっていくんですよ。

   

どこどこにおける水位のピークは何mで何時間後(若しくは何日後)のもよう。

  

人々は実際の被害がどこまで及ぶのかわからないまま対策に追われるんですよ。

こんな真綿で首を絞めるような災害は精神的にもキツイですよ。

   

そんな中、ブリスベンから西へ130キロの内陸の町、トゥウンバ(Toowoomba)を襲ったのは、内陸部の津波(Inland Tsunami)と報じられた鉄砲水。

死者10名以上、行方不明者50名以上を出す大災害となり、死者数はこれからさらに増えると思われます。

  

現在、洪水の被害を受けているのは、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州に南オーストラリア州。

今後も被害が拡大する地域があると思われます。

  

今のところ、アデレードには洪水の被害が及ぶということはなさそうですけどね。

各地を襲った洪水による経済的な影響を受けることは考えられます。

   

日本を襲った昨夏の猛暑。

ヨーロッパと北米を襲う寒波。

オーストラリア大陸を襲う水害。

  

地球のリズムが狂っていますよ。 

  

  

01012011_41

2011年1月 9日 (日)

ひでぶであべしな正月の話。

えー。

  

新年の挨拶を。

  

年が明けて十日も過ぎた今となってはね。

正月気分なんて抜けに抜けまくっている頃でしょうか。

  

新年の挨拶がここまで遅れましたのですね。

  

事情があるんですよ。

    

  

年末年始と、少しまとまった休みとなったんでね。

  

年越しはキャンプをしよう。

  

ということになったんですよ。

  

アデレードから500キロほど離れたニューサウスウェールズ州北西部のアウトバックに忽然と現れる街、ブロークンヒル (Broken Hill)

銀、亜鉛、鉛などの採掘により、1800年代後半から1900年代中盤にかけて栄えに栄えた街でして。

オーストラリアを代表する大企業であり、世界最大の鉱業会社、BHPビリトンを生んだ街でもあるんですわ。

今日でも採掘は続いているものの、主要な鉱脈を掘り尽くした1950年代頃から街は次第に衰退してきていていまして。

ブロークンヒルの街自体は、アウトバックの真ん中に存する街とは思えないほどの大きさながら、過去の街となった今は枯れた雰囲気が漂っていましてね。

  

そのブロークンヒルから北西に25キロ。

周囲360度すべてアウトバックという中を貫く一本道を走るとね。

シルバートン (Silverton) という町に至るんですわ。

   

この小さな町はね。

ゴーストタウンとして有名な町でしてね。

  

ブロークンヒルよりも早くに町が生まれ、鉱業によって栄えたんですけどね。

やがて、ブロークンヒルに都市機能が移っていくにつれて、シルバートンの町も衰退してね。

     

今や、その町はゴーストタウンとなっているそうで。

   

大陸のいたるところで様々な鉱物を採掘してきた歴史をもつオーストラリアにはね。

それこそ、いたるところに ”ruin” と称される廃墟が残っているんですよ。

   

そして我々夫婦はね。

  

そんな廃墟が大好き。 

   

建物やら採掘に使用した重機類なんかをね。

放っておいたら廃墟となりました。

一応100年ほどの歴史があるので ”ruin” として小さな看板でも立てておきますよ。

  

31122010_34

   

「もしかしたら危ないかもしれないですよ。」 いう旨の看板が立っていることもあるんですけどね。

基本的には柵もなく、自由に入ったり触れたりできることも多いんですよ。

保存しようという努力も、特に事故防止のための対策なども施されていない廃墟はね。

素直に過去を偲ぶことができるんですわ。

  

これがね。

保存のための補強やら、安全対策のための柵なんてものがあるとね。

興醒めしてしまいますよ。

     

国立公園の山の中に木々に埋もれるようにして建つ大きな壁。

   

山の斜面に横たわるのは、錆びに錆びたレールの残骸。

   

なにやら車の残骸などもありますよ。

      

”ruin” を楽しむにあたってはね。

過去を偲ぶ気持ちを忘れてはだめですよ。

     

少しでもその気持ちが揺らぐとね。

    

目に映るものはね

  

不法投棄。

   

それでも、そんな廃墟が好きでね。

出先で ”ruin” を見つけると必ず訪れる我々。

  

ゴーストタウンと称されるシルバートンを見逃すわけにはいきませんよ。

  

年末から年始にかけて、アデレードは気温40度超の予報。

アウトバックは文字通り灼熱となる予報ですよ。

  

友人を誘うとね。

  

絶対に行かない。

  

暑いもの。

  

海に行く。

  

正当な意見ですよ。

  

暑いというか、熱い中にね。

  

なぜ故にアウトバック?

  

マゾですか?

  

友人がね。

  

奥様に聞きましたよ。

    

奥様はどうなの?

  

アウトバックに行きたいの?

  

海に行きたいの?

   

  

私はね。

  

もう洗脳されているから。

  

  

数日前からね。

  

ことあるごとにね。

  

  

ブロークンヒルの近くにね、奥様。

  

ゴーストタウンがありましてね、奥様。

  

メル・ギブソン主演の映画 ”MAD MAX2” の撮影も行われたというシルバートン周辺は、さながら ”北斗の拳” の世界が広がっているそうですよ、奥様。

  

アウトバックに昇る初日の出も見れますよ、奥様。

  

どうします? 奥様。

   

    

行く。  

  

     

そうですか。

  

奥様も行きたいんですね。

  

洗脳成功。

  

行きましょう、行きましょう。   

  

シルバートンで三泊ほどキャンプしてね。

新年を迎えて1月2日に帰ってこようということでね。

昨年12月30日にアデレードを発ったわけですけどね。

      

この続きはまたということで。

  

それでは、アウトバックに昇る初日の出とともにね。

  

明けましておめでとうございます。   

  

     

01012011_22

2010年12月29日 (水)

季節はずれのサンタが蕎麦を食った話。

気がつけばクリスマスも終わり、いよいよ年末ですな。

   

あいもかわらず、まったく実感のない年末となりましたけどね。

   

今日は12月29日。

日本の皆様は仕事を納めて年末の休暇体制に入られた頃でしょうか。

     

こちらではね。

暦上、クリスマス当日が土曜日だったこともあってね。

振り替え休日を含めて、昨日28日までの四連休。

街はさながら正月の東京のようなゴーストタウンぶりでして。

    

連休明けの本日からはね。

一応平日に戻ったものの、年末ムードは例年のごとくゼロ。

この時期、日本で頻繁に耳にする「仕事納め」や「大掃除」などの概念は全くない国なんでね。

    

街には師が走るほど忙しいという雰囲気なんぞ、あるわけもなく。

  

むしろね。

  

クリスマス休暇明けでデロデロなムード。

    

先日ね。

実家の母親から荷物が届いたんですよ。

   

箱の中から出てきたのはね。

  

楽しみにしているテレビを録画したDVD。

    

お菓子。

  

小さなウサギの置物。

  

一瞬、何かと思いましたけどね。

もしやと思えば。

  

来年は年男&年女夫婦。

  

それからね。

  

なぜかね。

  

大量のね。

    

ポケットティッシュ。

   

一瞬、何事かと思いましたよ。

  

聞けばね。

かなり前に、このブログでね。

日本のポケットティッシュは貴重だと書いていたことを覚えてくれていたみたいでね。

   

それにしても。

  

けっこうな量ですよ。

  

ちり紙。

  

オーストラリアの税関は厳しくてね。

大陸特有の生態系を守るために、国内に持込できる物を厳しく制限しているんですよ。

  

生き物や生鮮食品などは言わずもがな。

加工食品や植物でできた民芸品などもね。

物によっては税関で没収となってしまうわけですよ。

  

郵送で送られてくる荷物もね。

X線などで検査された上、場合によっては箱を開けられて調べられるんですけどね。

この場合は 「箱を開けて調べましたよ」 という紙切れが入っておりましてね。

また、没収されたものがあれば 「没収しましたよ」 という紙切れが入っているんですよ。

  

実家から届く荷物ですけどね。

ほぼ毎回と言っていいほどね。

この 「箱を開けて調べましたよ」 カードが入っているんですよ。

何かが没収されたということは、今のところ無いんですけどね。

   

今回届いた荷物からもね。

この 「箱を開けて調べましたよ」 カードが。

  

開けた税関職員にとっても謎だったでしょうな。

  

なぜ故に大量のティッシュが?

  

私が思うにですね。

税関職員は始めにX線にかけたんでしょうな。

  

最近の荷物を調べるX線ね。

空港で目にすると思うんですけどね。

かなり高性能ですよ。

  

白黒で内容物の形だけ映し出されていた一昔前に比べるとね。

今日の機械は、テレビを観ているような画面を映し出しますよ。

  

そんなX線を見つめる税関職員の目にとまったのはね。

  

大量のちり紙。

  

一応ね。

  

オーストラリアは先進国を自負する国ですよ。

  

別に紙類が不足しているということもありませんよ。

  

そんな国に送られてきた荷物の中に大量のちり紙が。

   

おもいっきり怪しいもの。

  

というわけでね。

今回、荷物を開けられて調べられたのはね。

このポケットティッシュのせいだと思うんですけどね。

  

最後まで税関職員の疑問は晴れぬまま。

  

あくまでも私の想像ですけどね。

  

その荷物の中には食料品も入っていましてね。

  

おいしそうな蕎麦があったんですよ。

  

十割そば。

  

蕎麦粉100%だって。

  

蕎麦湯も楽しめるそうですよ。

  

最近は日本食材も比較的容易に手に入るオーストラリア。

  

とはいえ。

  

それこそ何でも手に入る東海岸と違ってね。

手に入る日本食材は、中国製や韓国製の一味違ったモノが多いアデレード。

  

日本の蕎麦粉100%の蕎麦なんて食べたことありませんもの。

  

昨日からじわりじわりと暑くなってきたアデレード。

   

冷たい蕎麦でも食べたいな。

  

と思いまして。

  

茹でました。

   

奥様がシャワーを浴びている隙に。

  

茹で上がった十割そば。

  

それはそれは美味でしてね。

  

しっかりとしたコシもあって。

  

こんな蕎麦は久しく食べてないですね。

   

うまいうまいと完食に近づくころ。

  

ふと気づきましてね。

  

もしかしてさ。

  

おかんはさ。

  

年越し用に送ってくれた?

   

そうでしょ。

  

私だってね。

  

天ぷらの用意してたんだから。

   

  

普通は気がつくでしょ。

   

  

すいません。

  

若干フライング気味で食っちゃいました。

  

冒頭にも言いました。

  

あいもかわらず、まったく実感のない年末となりましたけどね。

   

   

14102010_canberra_15

   

   

2010年12月12日 (日)

洪水に立ち向かうお巡りさんの話。

今年は全国的に雨の多い年でね。

例年なら各地から山火事のニュースが報じられるころだというのにね。

  

各地から報じられるのは大洪水のニュース。

  

われわれ夫婦がね。

先々月の旅行中に洪水に遭遇した、ニューサウスウェールズ州の内陸の町がワガワガ(Wagga Wagga)

あれから何度も洪水に見舞われただけでなく、いまだ降り続ける大雨により被害は拡大中。

  

そのワガワガだけでなく。

  

クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州に南オーストラリア州とね。

大陸東部は、どこもかしこも大洪水ですよ。

  

昨年まで続いた大規模な干ばつは、オーストラリア国内の農業に大打撃を与えただけでなく、小麦をはじめとする世界的な原料高騰の一因となったわけですけどね。

今年は、その長らく続いた干ばつが終わって大豊作だと言われていたんですよ。

  

それがね。

  

収穫間近のここにきてね。

  

農作物は度重なる洪水によって、再び大打撃を受けたわけですよ。

   

ここアデレードもね。

例年なら、肌寒い日と暑い日を繰り返しながらも、空気は痛いほどに乾燥する時期なんですけどね。

今年は雨が、それも雷を伴う大雨が多くてね。

おかげで、気温が上がった日などは不快な蒸し暑さ。

  

アデレードの夏はね。

熱波に襲われようとも、乾燥しているからこそ耐えられるんであってね。

このまま本格的な夏を迎えてね。

40度超の上に湿度もなんてことになればね。

  

死んでしまいますよ。

  

まさしく今年の日本の夏がそうでしょう?

   

   

もう二週間ほど前のことになるんですけどね。

   

仕事に行ったんですよ。

  

ちなみにね。

私はホテルのキッチンの中でも、バンケット・キッチンと呼ばれるパーティー用のキッチンで働いていましてね。

結婚式や企業のカンファレンス、今の時期だと企業のクリスマスパーティーなどを一手に引き受けているわけですよ。

レストランとレストランのキッチンはホテルの1階にあるんですけどね。

パーティー会場とバンケットキッチンはホテルの最上階、15階にあるんですよ。

  

その日は夕方からウェディングが入っていましてね。

午後から出勤したわけですよ。

  

さぁ、ウェディングに向けて仕込みを始めようとね。

15階のキッチンに入るとね。

  

先に来ていたシェフが半ギレ状態で掃除中でして。

  

どうした?

  

大洪水だよ。

  

今朝の雨だろ。

  

雨なんか降ったの?

  

午後からの出勤だったものでね。

  

朝なんか知らないし。

  

起きてから今に至るまでね。

空は曇っているものの、雨は降っていませんよ。

   

どうやらね。

  

朝方に降った雨はけっこうなものだったみたいでね。

大量の雨水が、ダクトかなんかを伝って真下のキッチンに流れ込んだみたいですよ。

   

おかげでね。

  

ダクト消火が吹いた上にね。

  

ガス遮断。

   

今夜はウェディングですよ。

  

ガスはサービスの時間までには復旧したんですけどね。

仕込みの間はね。

ガスが使える1階と15階を行ったり来たり。

  

時折、局地的な大雨が降るアデレードではね。

よくあることなんですよ。

大量の雨水が建物内に流れ込むなんてことは。

   

多くのレストランやカフェ、パブなんかはね。

ナショナルトラストと呼ばれる歴史的建造物に指定された、築100年以上の建物を利用しているのでね。

リフォームを繰り返しているとはいえ、建物のあちこちにガタがきているわけですよ。

   

ところがね。

  

私が働いているのはね。

  

5スターのホテル。

  

しかもね。

  

オープン間もない新築のホテル。

   

これはね。

  

この建物がどうのこうのという問題じゃなくてね。

建築基準が日本と違うんだと思いますよ。

  

屋上の防水加工とか。

  

梅雨という雨季を持った日本とね。

基本的には乾燥している南オーストラリアではね。

   

   

オーストラリアに来て五年目となりましたけどね。

いまだに驚かされることがありますな。

   

先日ね。

  

仕事から電車で帰ってきたんですよ。

厳密にいうとディーゼル車なんで電車じゃないんですけどね。

  

単線でね。

  

一両編成。

  

それは話の本筋にするほどのことではないんですけどね。

  

駅に着きましてね。

  

駅といってもね。

  

バス停に毛の生えたようなモノ。

  

それは話の本筋にするほどのことではないんですけどね。

   

駅の前に片側一車線ずつの二車線道路がありましてね。

いくら田舎だとはいえね。

街灯はきちんと整備されておりまして。

時間は夜の10時を過ぎたところで、ぼちぼち車も走っていたわけですよ。

   

ふと見るとね。

道の真ん中に大きなスーツケースのようなモノが落ちているんですよ。

  

危ないな。

  

とは思ったんですけどね。

  

けっこう車は走っているし。

  

みんなキチンと避けているし。

  

ちゃんと前を見て走っていれば、気がついて避けられるようなモノなんですよ。

  

そのスーツケースのようなものは。

  

というわけでね。

   

そのスーツケースのようなものを見捨てて歩き始めたんですけどね。

  

少ししたらね。

   

バン。

  

という大きな音。

    

ありゃ。

  

あたっちゃったか。

  

誰だよ。

  

きちんと前も見れないバカは。

  

と思いながら振り返りましたよ。

       

前バンパーの下あたりにね。

  

先ほど見かけたスーツケースのようなものをはさんで停まっていたのはね。

  

パトカー。

  

そのパトカーね。

  

赤灯をまわしながら停まったわけですよ。

  

道の真ん中にね。

  

両方向を走る車はね。

  

最徐行となるわけですよ。

  

道の真ん中に赤灯をまわしたパトカーが停まっているわけですから。

   

私が電車を降りた駅は終着駅なんでね。

  

電車に乗っていた乗客は全員降りてその道を歩いていたわけですよ。

   

全員で三人ほど。

  

そんなわけでね。

  

まぁ、ぼちぼちな数の目がね。

  

パトカーを見ていたわけですよ。

  

そんな中でですよ。

  

パトカーを降りてきたお巡りさんね。

  

バンパーの下に挟まったスーツケースを引っぱり出すとね。

  

なぜか半ギレ状態でね。

  

思いっきりね。

  

歩道に向かってね。

  

放り投げました。

   

   

14102010_canberra_64_3

   

   

   

2010年11月28日 (日)

私の記憶が確かならば。。。

オーストラリアのテレビ事情。

  

基本的なテレビ局は5局。

デジタル化によって、各局チャンネル数を3つか4つほど増やしたのでね。

チャンネル数こそ5から22ほどに増えたんですけどね。

同系列のチャンネルでは、同じ番組を放映していることが多いものでね。

デジタル化によって番組数が大幅に増えたということもなく。

   

さらにね。

放映されている番組もつまらないものばかりでね。

  

ニュース、スポーツ中継以外だとね。

  

ひたすらアメリカのテレビドラマ。

もともと、シーズン7とかシーズン8なんてしつこい上にね。

  

再放送率高し。

   

バラエティとなると壊滅的でね。

  

基本的にはね。

   

パクリ。

  

厳密に言うとパクリじゃないんだけどね。

イギリスやアメリカでヒットした番組の版権を買って、そのオーストラリア版をつくるというね。

日本でもあった ”クイズ・ミリオネア” みたいなパターンですな。  

   

例えばね。

  

全米を席巻した素人参加型ダイエット番組 ”Biggest Loser” のオーストラリア版。

ここオーストラリアには我々アジア人の想像をはるかに超えた体型をされた方が多くいらっしゃいますからね。

   

大企業のCEOが身分を隠してフランチャイズの現場に潜入する、アメリカ発の番組 ”Undercover Boss” のオーストラリア版。

  

イギリス発の素人参加型料理番組 ”Master Chef” のオーストラリア版。

オーストラリア版は壮絶な人気を誇り、それに伴ってシェフと呼ばれる人々に注目が集まり、さらには料理をするということがちょっとしたブームになりつつあるこの頃。

  

そんな、ちょっとした料理ブームのこの頃にね。

  

満を持してチャンネル7が送り出した番組。

   

IRON CHEF AUSTRALIA。

   

日本が誇る ”料理の鉄人” オーストラリア版ですよ。

  

ちなみにね。

日本の”料理の鉄人”は、もちろん再放送ながらも放映されていましてね。

いまだに人気を誇った番組なんですよ。

  

一度アメリカに輸出されてね。

出演者の話す言葉をすべて英語に吹き替えてね。

さらにオーストラリアに輸出されてきた番組なのでね。

  

実況の福井アナウンサー、審査員の栗本慎一郎氏や細木数子氏などは流暢な英語を話しているわけですよ。

  

流暢な英語を話さない日本人である私はね。

      

これに英語の字幕を表示させて観るという、もう何が何だかわからない状態で観ているわけですよ。

  

そのなかでもね。

   

番組の顔でもある、鹿賀丈史氏だけは日本語を話していてね。

  

やはり、彼の強烈な個性は吹き替えてしまうと失われてしまうというのが、製作者側にも分かるんでしょうな。

  

言わずもがな”料理の鉄人”とはね。

鉄人と呼ばれる最高峰の料理人と、鉄人に勝るとも劣らない料理人との息をのむような真剣勝負が見所なわけですよ。

   

そんな鉄人のオーストラリア版ですよ。

料理ブーム、鉄人好きのオーストラリア国民だけでなく、日本人である私の期待も高まるというものですわ。

  

さて、第一回目の放映。

  

始まりましたよ。

  

IRON CHEF AUSTRALIA

  

若干セットが貧弱ですな。

  

ペラペラと喋っているおっさんは司会進行役みたいですね。

  

するとスーツを着たサラリーマン風の男は何ですか?

  

彼は時折奇声を上げながら奇妙な動きをされますが。

   

なんのつもりですか?

  

もしや。

  

鹿賀丈史役?

   

鉄人での鹿賀丈史氏はね。

   

彼が築いてきた個性に裏打ちされて成り立ったものであってね。

   

わけわかんない男が奇声を上げたり、奇妙な立ち振る舞いをするのとはまったく異なるんですよ。

     

頭にくるのがね。

  

微妙に日本人風。

   

馬鹿にするな。

  

でもまぁ。 

  

異国でつくられた番組だから。

  

しょうがない部分もありますわな。

  

真剣勝負に期待しましょう。

  

まがりなりにも、ここオーストラリアでシェフとして働く私。

  

そりゃ興味ありますよ。

  

オーストラリアの鉄人勝負。

  

さぁ。

  

鉄人の登場ですよ。

   

誰ですか?

   

彼はね。

  

一応プロのシェフみたいですけどね。

  

誰ですか?

  

そこらへんのカフェのキッチンにでもいるような男ですよ。

   

して挑戦者は?

  

誰ですか?

  

こっちはね。

  

完全に素人ですよ。

  

日本が誇る ”料理の鉄人” が。

  

息を呑むような戦いが。

  

普通の調理師と素人との戦い。

  

緊張感など伝わってくるはずもなく。

  

むしろ戦いはボロボロですよ。

  

後日観た回にいたってはね。

  

審査員が鉄人と呼ばれる男の皿を試食しようとして。

  

「鉄人の髪の毛が入っているわよ。」

  

ありえませんよ。

   

これってフジテレビから版権を買って制作していると思うんですけどね。

   

フジテレビ側はチェックしないんですかね。

    

なんて少々腹を立てながら画面を観るとね。

   

奇声を上げながら奇妙な動きをするサラリーマン風の男。  

  

  

14102010_canberra_105   

2010年11月14日 (日)

いつまでも放浪していた話。

一ヶ月間ほっつき歩いていたことからも分かると思うんですけどね。

  

仕事辞めました。

  

辞める。

  

と宣言したのは6月のことですよ。

  

もう少しだけ働いてくれ。

  

と言われましてね。

    

働き続けること三ヶ月。

9月に入ってから、ようやく解放されたわけですよ。

   

辞める直前にね。

ひょんなことから次の仕事のオファーをいただきましてね。

   

その昔、奥様はね。

地元の教会に顔を出していたことがあるんですよ。

英語の勉強だということで。

  

そこで知り合った方がですね。

奥様に電話をくれましてね。

  

新しくカフェを併設したファンクションセンターを始めるにあたってね。

寿司を作ってくれないかと。

  

同時にね。

シェフである私にもフルタイムで働いてもらえないかと。

   

  

オーストラリアではね。

     

新聞やインターネットなどのメディアに出てくる求人は、実際の求人数の半分にも満たないと言われていましてね。

その半数以上のメディアに出てこない求人と言うのはね。

いわゆる口コミなんですよ。

  

誰かいい人いない?

  

職種を問わず、多くのポジションが”誰かいい人いない?”で決まっているみたいで。

  

基本的に人材を一から育てることはしない国。

空いたポジションは、しかるべき資格、技術、経験を持った人材で補充するわけですよ。

   

それにはね。

  

誰かいい人いない?

  

がてっとり早いみたいで。

   

まるっきり一から始めるビジネスでね。

オープン予定は10月の半ばであると。

   

それなら旅行には行けますな。

  

三週間の予定で旅行に行ってきますよ。

   

  

オーストラリアではね。

   

新規ビジネスが予定通りスタートすることは、100%近くないんですよ。

飲食業では特に。

改装工事が大幅に遅れる。

役所からの許可が下りない。

などの理由からなんですけどね。

  

一ヶ月程度なら日常茶飯事。

六ヶ月、一年オープンできないなんていう、経営者からしてみたら死活問題となりそうなことも。

   

三週間の予定でといいつつもね。

旅先から連絡を取り合えば、オープン間近までたっぷり旅行ができるなと。

   

予想通りね。

旅先からかけた電話からは、オープンが多少遅れるとの知らせが。

  

我々は全然気にしませんよ。

   

そんなわけでね。

三週間の旅行の予定は徐々に伸びていったわけですよ。

   

ビクトリア州はスワンヒル(Swan Hill)

旅も終盤にさしかかっていましてね。

この先どうしたものかと案じていたんですよ。

  

そろそろ帰らないとまずいですね。

    

がんばれば一日でアデレードに帰れますよ。

  

なんてことを考えていたんですけどね。

   

天気もよく、気温も上がった昼下がり。

予約したマレー川クルーズにまで時間があるのでね。

町をぶらぶらしながら時間をつぶしていたわけですよ。

  

気持ちのいい日でね。

   

もうすっかり春ですな。

  

ふと携帯電話を見るとね。

不在着信と留守電が。

   

あれ。

  

さっき運転してたときかな。

  

と思いつつも留守電の確認。

   

留守電にはね。

  

新しくボスとなるはずの男の声が。

   

曰く。

   

ホリデーを満喫しているか?

  

おかげさまで。

  

ビジネスの話なんだが。

  

はいはい。

  

実はいくつか問題があって。

   

やっぱり。

  

すぐにはオープンできそうにない。

  

いいですよ。予想していましたから。

  

しばらくホリデーを楽しんでくれ。

  

最初からそのつもりですよ。

    

オープンするのは。。。

   

いつですか?

   

May be next year !

   

はい?

   

See ya!

   

See ya ぢゃねーよ!

    

この先二ヶ月無職は無理ですよ。

    

   

オーストラリアではね。

  

仕事のオファーをもらってもね。

実際に働き始めるまでは安心するなと言われていましてね。

今回のように仕事のポジション自体が消滅してしまったり。

連絡しますと言われたきり、音信不通になったりと。

  

ビクトリア州の田舎町でね。

   

春先ののどかな陽気の中でね。

   

リバークルーズの目前でね。

   

お先真っ暗。

   

結構といいますかね。

かなり使っちゃいましたよ。

  

お金。

  

軽く海外旅行できるぐらいは使っちゃいましたよ。

  

次の仕事が決まっていたので。

    

結局ね。

開き直った我々はね。

さらにビクトリア州のグランピアンズ国立公園(Grampians National Park)にてね。

たっぷりとキャンプしてからアデレードに帰ったわけですけど。

  

帰ってきてからね。

新しくボスとなるはずだった夫婦に話を聞いてみるとね。

  

アスベストが出てきちゃった。

  

改装工事でアスベストが出てきてね。

ビジネスを始めるにはね。

完全に除去をするか、養生した上で高額な保険に加入するしかない。

  

だからビジネスはあきらめる。

    

とのことで。

  

仕事がなくなったわれわれよりもね。

ビジネスを始めようと、すでに投資を始めた彼らも大変ですよ。

   

これから夏を迎えるアデレード。

求人はそれこそ山のようにあるんですけどね。

  

以前働いていたビストロではなく、ファインダイニングやホテルで働きたいと思いましてね。

そのような求人に履歴書を出しまくるんですけどね。

前述のように、空いたポジションはしかるべき資格、技術、経験を持った人材を補充するのでね。

面接のオファーすら来ないありさまで。

  

少しあせり始めた二週間後。

ビストロで働くかと思い始めたころにですね。

   

一応名の通ったホテルからオファーを頂きましてね。

  

先週から働き始めたわけですわ。

   

これで新年が迎えられますよ。

  

  

14102010_canberra_99

2010年11月 7日 (日)

太陽を求めて放浪した話。後編。

そのキャンベラを発った日はとんでもない大雨の日でしてね。

次の目的地はビクトリア州のスワンヒル(Swan Hill)

キャンベラからは多少距離があるので、今日は中間地点のヘイ(Hay)という町まで行きましょう。

    

スタートハイウェイ(Sturt HWY)はシドニーとアデレードを結ぶ幹線道路ですけどね。

マレー川(Murray River)の支流であるマランビジー川(Murrumbidgee River )に沿って走っているんですよ。

ヘイに向かって走れば走るほど雨脚は強くなりましてね。

途中徐行を余儀なくされるほど。

  

なんとか昼過ぎにはワガワガ(Wagga Wagga)という町に到着しましてね。

昼食をとっていざ出発。

  

ところがね。

町から先のハイウェイはすべて封鎖。

  

冠水したみたいですよ。

  

戻ろうにもね。

ここまで通ってきた道も封鎖。

  

まさしく八方塞がりですよ。

 

ここに泊まればいいじゃない。

  

水が引くのを待ちましょうよ。

   

ツーリストインフォメーションで教えてもらったキャラバンパークの名前はね。

   

Wagga Wagga Beach Caravan Park

   

ワガワガはニューサウスウェールズ州の内陸の町ですよ。

  

なぜ故にBeach

   

レセプションで聞いてみるとね。

キャラバンパークのすぐ横にはマランビジー川。

その川原がビーチのようになっていて子供たちには人気があるとのこと。

   

なるほど。

   

大雨ですけど大丈夫ですか?

  

チェックインの手続きも終わってね。

  

パーク内の地図で我々が滞在するキャビンの位置と、レセプションからのアクセスを説明してくれる女性。

  

あなたたちのキャビンはここ。

   

川のすぐ横だけどね。

  

水位はまだ低いから大丈夫。

   

本当ですか?

   

結構降りましたよ。

多少弱まったとはいえね。

まだ降ってるし。

  

ここまでの道中でね。

いろいろ見てきましたよ。

   

道路の横を滝のように流れる水とか。

   

溢れそうな川とか。

  

もう溢れちゃった川とか。

  

現にね。

   

道路は封鎖される事態ですよ。   

   

それでも今はね。

この女性を信じるしかないんですよ。

このキャビンだってね。

キャンセルによって一つだけ空いていたわけだし。

他の宿泊施設だってね。

動けなくなった旅行者でいっぱいになることは容易に想像できますよ。

   

もう車中泊なんてイヤ。

   

キャビンに行ってみるとね。

  

なるほど。

   

川のすぐ横ですな。

   

15102010_wagga_wagga_6    

    

あきらかに普段は川じゃないところが川になっていますよ。

   

大丈夫ですか?

  

水位はまだ低いとおっしゃっていましたよ。

  

大丈夫でしょう。

   

それよりもね。

雨も弱まってきているし。

外は十分明るいし。

  

何か見所はありませんか?

  

この町には。

  

とはいえ時間は夕方と呼ばれる頃合となっていましてね。

こんな田舎町の見所はすでに閉館となっている時間。

  

奥様がツーリストインフォメーションからもらってきたパンフレットの中にね。

鉄道博物館(Rail Heritage Museum)というものがありましてね。

   

魅力的じゃないの。

  

でもどうせ4時か5時で閉館だろ。

  

パンフレットには開館時間載っていますか?

  

開館時間。

  

Mondays 10am to 2pm

   

はい?

   

私の稚拙な英語力で理解したところですね。

  

開館時間はね。

  

月曜日の午前10時から午後2時まで。

   

のみ。

     

なんですか?

  

これは。

  

超ピンポイント営業。

  

暗くなるころには再び雨脚も強まりましてね。

   

奥様。

  

これは明日も道路は封鎖されたままじゃないですかね。

   

もう一泊しましょうか?

   

道路の状況は携帯から常時チェックすることができるんですけどね。

  

夜半を超えるころになっても封鎖されたまま。

   

朝一で道路状況を確認した上でね。

この町を離れるか、もう一泊するか決断するということになったんだけどね。

   

気持ちの上では98%もう一泊。

  

   

翌朝。

  

ほぼ延泊するつもりで眠りこけていたんですけどね。

繰り返されるノックの音で目が覚めまして。

時計を見ると7時をまわったところ。

  

我々にとっては思いっきり早朝ですよ。

  

なんですか?

  

こんな時間に。

  

玄関先にはトランシーバーを手にしたおっさんが一人。

  

いますぐ逃げろ。

  

寝起きの頭でもね。

その言葉だけですべてを理解しましたよ。

  

川が溢れるんだな。

  

16102010_wagga_wagga

        

昨日見えていた看板が完全に水没しましたね。

一晩で水位が2m近く上がりましたよ。

   

奥様。

  

逃げろ!

    

朝が弱い奥様も一発で状況を理解しましてね。

外に出てみるとブルドーザーは走り回ってるわ、消防団の人たちは大勢いるわで。

     

キャラバンパークのキャビンにはね。

キッチンと調理器具、食器等が備え付けてありましてね。

チェックアウト時にはすべて洗ってきれいにするのがルールなんですよ。

   

昨夜の夕食後には9割がた延泊するつもりだった我々。

明日洗えばいいやと汚れた食器はシンクに放置されたまま。

  

逃げますよ。奥様。

  

待って。

  

まだ食器が。。。

  

って奥様。

   

避難ですよ。

  

文字どおり車に荷物を放り投げてね。

寝巻きのまま飛び乗ってね。

     

夜逃げ状態。  

  

ところどころ冠水していたものの、道路は開通しておりまして。

ビクトリア州はスワンヒル(Swan Hill)を目指すわけですけどね。

  

一泊したもののキャラバンパークに缶詰状態となっていたワガワガという町についてはね。

  

いまだに謎のまま。

   

その日の夕刻。

スワンヒルで観たニュースが報じていたのはね。

  

ワガワガで洪水。

  

大洪水となったみたいですよ。

我々が町を離れたあと。

   

  

昨日ワガワガのツーリストインフォメーションで聞いたのはね。

  

過去15年間ひどい干ばつに苦しんできたと。

それが、今年の頭から雨が降り続いてこの有様なんだと。

   

まったく降らないか、降れば大洪水。

     

地球のリズムが狂っていますよ。

  

この旅行でね。

7000キロ運転しましたけどね。

どこもかしこも工事だらけ。

都市部はもとより。

都市と都市を結ぶハイウェイの人里離れたところでもね。

  

工事工事工事。

  

景気がいいからなのか。

はたまたリーマンショック後の景気対策の名残なのか。  

  

オーストラリア大陸を一周するハイウェイが国道1号線。

中でもシドニーとブリスベンを結ぶ区間は国内でも有数の主要幹線道なんですけどね。

都市部以外は片側一車線の相互通行なんですよ。

一定区間ごとに追い越し車線が現れるんですけどね。

    

10年振りにこの区間を運転してみるとね。

片側二車線の区間がずいぶんと増えていましてね。

さらに、現在片側一車線の区間でも二車線化の工事が進められているんですよ。

    

悲惨な光景ですよ。

山間部に道路を作るわけですからね。

工事に伴うのは大規模な森林伐採。

     

何十年も何百年もそこにあった木々を切り倒されて、丸坊主にされた山や森林にはね。

もはや雨を蓄える力は残っておらず。

土砂を削り取った茶色い水が一気に大量に河川に流れ込む事態となるわけですよ。

   

オーストラリアは自然を大切にする国。

  

そう思っていたんですけどね。

   

だからこそ、日本の捕鯨廃止を求めて国際司法裁判所に提訴したことも正論だと思っていたんですよ。

捕鯨の是非じゃなくてね。

自然を大切にする国と国民が抱く当然の感情なのだと納得していたんですよ。

    

人の国のインフラ整備に口を挟むつもりはありませんけどね。

いたるところで目にする工事は、まるで新興国や発展途上国の勢いに任せた開発工事。

その下品な工事が度重なる災害の片棒を担いでいることは明白なわけですよ。

   

大変だったとはいえ、我々は一介の旅行者として洪水に遭遇しただけであってね。

そこは自分の生活圏内から1000キロ以上離れた地なわけで。

  

あくまでも対岸の火事。

    

不謹慎ですけどね。

    

災難は実際に自分の身に降りかかってくるまでは対岸の火事。

    

このままでいいんですかね?

   

対岸の火事が国中に延焼するのもね。

そんなに遠い未来の話ではないなと思いましたよ。

  

度重なる雨にやられた旅でしたけどね。

  

いろいろと考えさせてくれる雨でもありましたな。 

  

  

05102010_newcastle_31_5

2010年11月 4日 (木)

太陽を求めて放浪した話。 前編。

今年はオーストラリア全土で雨が多い年でね。

Driest Stateである南オーストラリア州でも雨の多い冬となりまして。

冬の終わりから春先にかけては、各地から洪水のニュースも。

  

普段から何かと雨にやられる我々夫婦。

   

もちろん今回もやられましたよ。

  

アデレード出発は小雨の中。

   

こんなもんでしょう。

  

それでも、ゴールドコーストに到着するまでの四日間。

時折雨は降ったものの、車での移動中や夜寝ている間に限られましてね。

   

雨夫婦である我々にしては上出来じゃないすか?

  

なんて話をしていたんですよ。

  

さて、ゴールドコースト。

   

多くの人がね。

   

”オーストラリア”と聞いて思い浮かべるもの。

   

ハーバーブリッジとオペラハウス。

  

カンガルーとコアラ。

  

それにね。

  

ゴールドコーストの雲ひとつない青空と、どこまでも続くビーチ。

     

晴天の日は年間300日以上と言われていましてね。

一年のうち八割は晴れですよ。

     

奥様にとってゴールドコーストとはどんなところですか?

   

どんよりしたところ。

   

ゴールドコーストに滞在した三日間のうち、二日間は低い雲に覆われた曇天。

時折小雨もパラパラと。

   

しかもね。

今年の5月に日本に帰国した際にね。

乗り継ぎ地であるゴールドコーストに三日ほど滞在したんですよ。

そのときはね。

三日間を通して曇天もしくは雨。

  

天気が悪くて肌寒い海辺の街。

   

それがゴールドコーストと聞いて奥様が思い浮かべるものですよ。

  

テーマカラーは間違いなくグレーですな。

     

   

バイロンベイ(Byron Bay)はゴールドコーストから車で一時間ほどのニューサウスウェールズ州北部の町。

オーストラリアの東端でもあるこの町。

ヒッピーの町と称されることも多いんですけどね。

近頃はすっかりツーリストの町、リゾートの町となったものの、町を流れるのは昔のままのゆるい時間。

  

ここは私がオーストラリアで最も好きな場所。

  

日頃からね。

  

奥様にね。

  

東海岸にはバイロンベイという町がありましてね。

  

それはそれは素晴らしいところですよ。

   

何がそんなに素晴らしいの?

  

言葉では表すことのできない素晴らしさですよ。

  

ぜひ体感していただきましょう。

  

バイロンベイ滞在は三日間。

   

奥様にとってバイロンベイとはどんなところですか?

   

どんよりして人がいっぱいいるところ。

   

天候が芳しくなかったばかりか、スクールホリデーと重なったおかげで、町のはるか外から渋滞が起こるありさま。

  

天気が悪くて肌寒くて人がいっぱいいる海辺の町。

  

それがバイロンベイと聞いて奥様が思い浮かべるものですよ。

  

バイロンのテーマカラーも間違いなくグレーですな。

       

  

バイロンを発って、クレセントヘッド(Cresent Head)に到着する頃には雨も本格的になってきましてね。

クレセントヘッドは私のわがままで決まった滞在先ですよ。

  

波乗りしたい。

  

海辺でキャンプでもしてさ。

のんびりと釣りでもしましょうよ。

  

と言って奥様を連れてきた場所ですよ。

  

ホリデーコーストと呼ばれるようにね。

シドニーあたりに住む人々が夏の太陽を楽しむ海辺の町。

とはいえ、クレセントヘッドには小さな村があるだけですけどね。

  

それはそれはきれいなビーチがありますよ。奥様。

  

クレセントヘッド滞在は三日間。

   

奥様にとってホリデーコーストとはどんなところですか?

  

どんよりして大雨が降る場所。

   

激しい風雨が滞在中続いてね。

  

もはやストームですよ。

  

海は洗濯機状態でクローズアウト。

  

海以外には何もない、というか海を含めたアウトドア以外には何もないホリデーコースト。

  

雨なんか降ったらね。

  

やることありませんよ。

  

何か遊ぶものは持ってきてないんですか?

  

こういうときに備えて。

  

トランプとか。

  

バックギャモンとか。

  

旅行といえば、いつもいつも雨にやられるんだから。

そろそろ学習してもいいころ。

  

何か遊ぶものはありますか?

  

はい。

  

フリスビー。

   

それは屋外で遊ぶものですから。

  

それだけですか?

    

遊び道具は。  

   

クレセントヘッドを発つという日。

キャンプ生活なのでね。

テントや椅子、テーブルなどを畳んで車に積み込むというめんどくさい作業があるんですけどね。

  

朝から大雨ですよ。

  

もう一泊しますか?

  

ずぶ濡れになりますよ。

  

こんな中でパッキングしたら。

  

結局ね。

もう一泊したところで、翌日も大雨っぽいこと。

もう一泊したところで、このストームの中では暇を持て余すこと。

   

というわけでね。

多少は雨脚が弱まったとはいえ、降り続ける雨の中でパッキング。

  

結果はね。

  

ずぶ濡れとなったテントその他のキャンプ用品を積んだおかげで車内もずぶ濡れに。

  

濡れて湿った車内はね。

かぐわしい香りを発しましてね。

その後の行程で、しばらくの間我々を苦しめたわけですよ。

  

しかもね。

パッキング作業中にポケットに入れていた携帯電話がね。

  

ずぶ濡れとなった挙句。

そっと息をひきとりまして。

  

降り続く大雨と吹き続ける強風に、いまにも溢れそうな河川。

  

それがホリデーコーストと聞いて奥様が思い浮かべるものですよ。

  

テーマカラーは限りなく黒に近いグレーですな。

       

     

雨から逃げるようにして向かったニューキャッスル(Newcastle)では珍しく晴天続き。

続くシドニーでも曇りと晴れを繰り返し、天気はまあまあ。

  

ブルーマウンテン(Blue Mountain)と首都キャンベラ(Canberra)では雨にやられたものの許容範囲内。

どちらもテーマーカラーはグレーとなりましたが。

  

クレセントヘッドではコテンパンにやられましたからね。

もうないんじゃないんですか。

  

雨は。

  

ところがね。

   

キャンベラを発つころから新しい話は始まりまして。。。

  

後編へ続きますよ。

  

  

  

   

   

昨日ニュースで報じられたアンディ・アイアンズの訃報。

サーフィン大国オーストラリアでは、各局のニュースで流れまして。

彼の死因については、早くもいろいろな憶測が流れていますけどね。

   

サーフィン界は一人の偉大なサーファーを失った。

  

事実はそれだけですよ。

  

故人のご冥福をお祈り申し上げます。

  

  

30092010_byron_bay_10_2

2010年11月 1日 (月)

アドベンチャーを求めて放浪した話。

ニューサウスウェールズ州の北部に広がるTweed Valley

  

オーストラリアの中で、最も好きな場所でしてね。

NightcapBorder RangesMebbinMt.Warningなど、点在する国立公園はいずれも世界遺産に登録された温帯雨林の深い森に囲まれておりまして。

  

かのニンビン(Nimbin)Tweed Valleyに存する村の一つ。

  

1970年代にAquarius Festivalが開かれてニンビンの歴史がスタートしたのも。

ここがヒッピーの聖地となったのも。

多くのアーティストがここに移り住んできたことも。

  

すべてはTweed Valleyの自然に魅せられてのことであってね。

  

とかく、路上でものを売る人々ばかりが話題になりがちなニンビン。

  

それだけではないんですよ。

  

この息を呑むような大自然をね。

ぜひ奥様にも体感していただこうと。

2000キロ離れたアデレードからやってきたわけですよ。

         

Tweed Valleyの中でも、ひときわ高くそびえる休火山、マウント・ウォーニング(Mt.Warning)

楯状火山の山頂からはバイロンベイ(Byron bay)や遠くゴールドコーストまで望むことができましてね。

  

ぜひ奥様にも登っていただきましょう。

  

目の覚めるような景色を奥様にも見ていただきましょう。

    

頂上までどれくらいかかるの?

  

私は過去に登ったことがありましてね。

   

きつかったのは最後の山頂アタックのみ。

  

だったような記憶が。

    

楯状火山の山頂部はね。

がけ状の岩場に鎖が打ってあってね。

その鎖につかまりながら、岩場をへばりつくように登って山頂へといたるんですよ。

最後の鎖セクション以外はそんなにキツイもんでもないですよ。

  

だったような記憶が。

    

何しろワーホリメーカーとしてゴールドコーストに滞在していたのは、もう10年以上も前の話。

観光で来てマウント・ウォーニングアタックしたのですら、2003年頃の話なので7年も前の話。

  

正直覚えていませんよ。

   

二時間あれば頂上まで行って帰ってこれるんじゃないすか?

   

たぶん。。。

  

奥様。

  

このウォーニング山アタックを試みるパーティーのリーダーは、経験者の私ということでよろしいですね。

   

よろしいですね。

   

ウォーニング山の登頂口からは、さほど遠くない山の中でベースキャンプを張っていた我々。

山頂アタックを試みる日は珍しく二人とも早く起きましてね。

  

入念な準備に時間をかけましょう。

   

ゴールドコーストで手に入れた日本語新聞にはまること二時間弱。

   

いかんいかん。

  

山頂アタックの入念な準備を。

    

朝ごはん。

    

山頂アタックの入念な準備を。

    

うんこしてきます。

   

大事ですよ。

  

それは。

  

そんなこんなで入念な準備に時間を取られましてね。

意気揚々とベースキャンプを発ったのは午後になってから。

     

山道を屈強な四輪駆動車でウォーニング山に向かいますよ。

山々が連なるこのあたりでも、ウォーニング山は頭一つ飛び出していましてね。

  

奥様。あれが本日アタックを試みるウォーニング山ですよ。

  

到着した登山口には看板がありますよ。

    

登山路 往復8.8キロ 4~5時間

  

なんですか?

   

トレッキングコースの入り口には、たいてい所要時間が書いてあるんですけどね。

好奇心が小学生並みの我々には、その二倍程度の時間が必要なんですよ。

  

そもそも8.8キロなんて。

  

死んじゃうべな。

   

もう一つ看板がありますよ。

   

冬季は午後12時以降の登山禁止

  

ですと。

  

オーストラリアの東端であるバイロンベイは目と鼻の先。

標高1000mを超えるウォーニング山はオーストラリアで最初に日が昇る場所ともいわれていましてね。

裏返せば日が暮れるのもオーストラリアで最初ということですよ。

春先の今頃でも午後5時を過ぎるとかなり暗くなるんですよ。

   

今の時間は?

  

午後二時をまわったところですね。

    

登ったことあるんじゃないの?

    

なにがですか?

   

ありますよ。登ったこと。

  

何でも聞いてくださいよ。

    

8.8キロもあったら二時間で帰ってこれるわけないじゃないの。

  

なにがですか?

  

今から登ったら暗くなっちゃうじゃないの。

  

死んじゃうべな。

  

パーティーのリーダーである私は決断をしなければならないですよ。

ここで強いリーダーシップを発揮しないとね。

パーティーは全滅してしまいますよ。

  

断腸の思いで。

   

明日にしましょう。

  

明日出直しましょうよ。

早起きしてさ。

午前中に登山を開始しましょうよ。

今日のところはベースキャンプに戻ってさ。

明日のために入念な計画を練りましょうよ。

   

入念な計画。

  

明日の朝は日本語新聞禁止。

  

翌日。

  

昨日のミーティングで決めたように、日本語新聞は手にすることなく登山の準備をベースキャンプでたんたんと進める我々。

  

奥様。

  

準備はよろしいですか?

  

では出発しましょう。

   

登山口に到着したのはね。

  

午後1時をまわったところ。

   

昨日と一時間しか変わらないじゃないの。

   

おまけに晴天だった昨日とはうって変わって曇天。

いまにも降り出しそうな空にね。

  

どうする?

   

とりあえず登りましょう。

  

やばくなったら引き返せばいいんじゃないですか?

  

心配しなくても引き返すタイミングはリーダーが決めますから。

   

登りだして30分もするとね。

けっこう勾配はキツイですよ。

     

そんなにキツくないって言ってたよね?

  

なにがですか?

  

さらに登っていくとね。

登山道はかなり急となるうえに足元も岩だらけでかなりキツイ。

   

そんなにキツくないって言ってたよね?

   

なにがですか?

  

前はこんなにキツくなかったですよ。

  

私が登った7年前はね。

  

こんなにキツイ山じゃありませんでしたよ。

  

いつからこの山はこんなにキツくなったんですかね。

  

これも地球温暖化の影響ですかね。

  

私が登った7年前はね。

  

私は20代でした。

   

時計を見ると午後2時半。

時折小雨が降ったり、晴れ間が覗いたり。

   

ここでリーダーは決断を迫られましてね。

   

奥様。

  

午後3時半をもって下山としましょう。

  

いいですね。

  

あと一時間たったら山頂に着いていなくても下山しますよ。

  

一時間半も歩いて、早くもヘロヘロですけどね。

   

私はあと一時間たったら強制的に下山する道を選びますよ。

   

いいですね。

  

わがままは許しませんよ。

  

死んじゃうから。

  

あと一時間歩いても山頂に着かない山なんてね。

   

こっちから願い下げ。

    

どうにかこうにか山頂目前の鎖セクションにたどり着いた我々パーティー。

    

上を見上げるとね。

  

壁。

  

こんなに急だったっけ?

  

しかもね。

  

下から山頂は見えず。

  

鎖でよじ登るのってほんの少しだけって言ってなかった?

  

なにがですか?  

    

さあ、アタックを開始しますよ。

   

これはね。

  

かなりキツイですよ。

  

ゆっくりゆっくりと。

  

鎖をつかみながらよじ登っていく私。

  

先を登る奥様が振り返ってね。

  

私に向かって。

  

パーティーのリーダーである私に向かって。

  

なんで小鹿のようになってるの?

  

鎖を握った腕もね。

  

岩の隙間にかけた足もね。

  

産まれたての小鹿のようにプルプルと。

   

こんなにキツかったっけ?

  

ふと下を見るとね。

足元はすべて雲に覆われていて何も見えず。

我々のところまで霧が広がってきていますよ。

遠くからは雷鳴も。

  

死んじゃうべな。

   

三時間近く頂上を目指して登ってきましてね。

文字通り山頂は目と鼻の先ですよ。

あと一歩で息を呑むような景色が見れますよ。

    

鎖にぶら下がってプルプルしているリーダーはね。

決断を求められまして。

    

勇気ある撤退。

   

二時間近くかけて下山しましてね。

二人ともヘロヘロですよ。

   

ウォーニング山。

  

登頂ならず。

  

奥様。

  

私のオーストラリアで一番好きな場所の一つですよ。

   

ぜひ山頂からの景色は見てもらいたいですな。

  

またチャレンジしましょうよ。

  

でもね。

  

もう当分いいです。

  

どんぐらいキツイか忘れたころに再アタックしましょう。

    

7年後ぐらいに。

  

  

27092010_mtwarning_3

«寝床を求めて放浪した話。